歯科クリニックで取り扱っている保険適用の被せ物には、皆さんもよくご存知の銀歯(合金)以外にもさまざまなものがあります。
その一つが、今回紹介する“硬質レジンジャケット冠”です。
初めて名前を聞くという方も多いかと思いますので、今回はこちらの被せ物の詳細について解説したいと思います。
硬質レジンジャケット冠の概要
硬質レジンジャケット冠は、すべてがレジンという歯科用のプラスチックでつくられた被せ物です。
保険診療で装着可能な白い被せ物と言えば、大体はこちらのことを指しています。
具体的には、金属の裏打ちのない冠全体が硬質レジンでできているものです。
ちなみに、硬質レジンは、高強度のプラスチックであり、MMA(メチルメタクリクレート)に金属微粒粉末であるフィラーをカップリングすることにより、強度を向上させた有機性築造材料です。
わかりやすくいうと、金属の粉が含まれたプラスチックです。
硬質レジンジャケット冠の適応部位
硬質レジンジャケット冠は、前から5番目の歯(第二小臼歯)までが、保険適用で装着できる範囲です。
6番目以降の歯(大臼歯)の治療では、保険適用で被せることはできません。
ちなみに、大臼歯以降の場合、使用可能な保険適用の被せ物は、冒頭でも触れた金銀パラジウム合金、つまり銀歯のみです。
硬質レジンジャケット冠のメリット
硬質レジンジャケット冠の主なメリットは以下の通りです。
・審美性が高い
・治療費がリーズナブル
・金属アレルギーの心配がない
・治療回数が比較的少ない
審美性が高い
硬質レジンジャケット冠は樹脂製のプラスチックでできているため、ある程度の白さを実現します。
天然歯と同じような透明感はありませんが、パッと見ただけで装着しているのがわかることはなく、比較的審美性は高いと言えます。
治療費がリーズナブル
硬質レジンジャケット冠は、第二小臼歯の治療にまで適用することができ、こちらの場合は保険が適用されるため、他の保険適用の素材と同じように、リーズナブルな価格で治療できます。
金属アレルギーの心配がない
銀歯や硬質レジン前装冠といった被せ物は、金属が含まれているため、金属アレルギーを引き起こす可能性があります。
一方、硬質レジンジャケット冠は、すべてがプラスチックでできているため、金属アレルギーの心配がありません。
治療回数が比較的少ない
硬質レジンジャケット冠は、治療回数が比較的少ないです。
具体的には、型取りと装着で、最短2回の通院で治療が完了するため、日頃忙しく、あまり歯科クリニックに通う時間がないという方にもおすすめです。
硬質レジンジャケット冠のデメリット
硬質レジンジャケット冠は、保健診療の被せ物の中では優れた特徴を持っていますが、以下のようなデメリットもあります。
・セラミックよりは審美性が劣る
・ひび割れ、擦り減りが起こりやすい
・長期間の使用によって着色、変色が起きる
・大臼歯には使用できない
セラミックよりは審美性が劣る
硬質レジンジャケット冠は、審美性の高さが売りの一つですが、こちらはあくまで保険適用の被せ物の中での話です。
やはり、すべてが陶器でできているオールセラミッククラウンや、人工ダイヤモンドが使用されたジルコニアセラミッククラウンなどと比べると、審美性は劣ります。
ひび割れ、擦り減りが起こりやすい
硬質レジンジャケット冠は、耐久性があまり高くありません。
こちらは、冠全体がプラスチックでできているからであり、保険適用の金属を使用している素材や、自由診療の素材と比べると、ひび割れや擦り減りといった問題が生じやすいです。
長期間の使用によって着色、変色が起きる
硬質レジンジャケット冠は、その性質上プラークがつきやすいです。
また、長期間使用することにより、着色や変色も起きやすく、そうなると以前よりも審美性を失ってしまいます。
大臼歯には使用できない
硬質レジンジャケット冠の適用部位という項目でも触れましたが、硬質レジンジャケット冠における健康保険の適用に大臼歯は含まれません。
こちらは、レジンのみでできていることから、大臼歯に使用すると、咬合力に耐えられないことが理由です。
硬質レジンジャケット冠の費用相場について
硬質レジンジャケット冠には、基本的に保険が適用されるため、治療費に関する不安は少ないです。
一般的には、1本4,000~7,000円ほどで治療することができ、複数本適用する場合であっても、自由診療の素材のように10万円単位の費用がかかることはありません。
なお、金属アレルギーの方は、大臼歯の治療にも、硬質レジンジャケット冠が公的医療保険適用のもと、使用できる可能性があります。
まとめ
ここまで、保険適用の被せ物である硬質レジンジャケット冠について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
保険適用の素材の中にも、硬質レジンジャケット冠のように、ある程度の審美性と機能性を兼ね備えたものは存在します。
ただし、耐久性や耐用年数まで考慮するのであれば、やはり多少治療費が高くなったとしても、自由診療の素材を選ぶべきだと言えます。