子どもを持つ親御さんは、誰もが我が子の健康を望んでいます。
また、口内環境と健康は密接な関係にあり、親御さんは子どもが不正咬合を引き起こしていないかどうか、具に観察する必要があります。
ここからは、子どもの“過蓋咬合”における概要や原因、リスクなどについて解説します。
過蓋咬合の概要
過蓋咬合(かがいこうごう)とは、ディープバイトとも呼ばれている噛み合わせで、上下の歯を噛み合わせた際に、下の前歯が上の歯に深く覆われて隠れてしまう、噛み合わせの深い状態をいいます。
正常とされている噛み合わせの深さは、下の前歯を上の前歯が1/3から1/4程度覆っている状態だとされています。
それ以上に下の歯が上の歯に覆われると、過蓋咬合と呼ばれます。
過蓋咬合の主な原因
過蓋咬合の主な原因には、遺伝的なものと後天的なものがあります。
遺伝的な要因として考えられるのは、以下のようなケースです。
・両親や祖父母などに、骨格や歯の異常が見られる
・歯の位置や傾きが、平均的な状態と比べて目立っている
・上顎と下顎の成長が均等に進まず、顎の骨の大きさやバランスが悪い
・前歯が伸びすぎている
・奥歯が成長せずに伸びていないため、高さが足りていない など
後天的な要因としては、虫歯などで奥歯を抜いたまま放置していると、噛み合わせの高さが低くなり、過蓋咬合になる場合があります。
また、強い力で歯を噛みしめる、下唇を噛む・吸う、頬杖をつくなどの癖も、過蓋咬合の原因になります。
過蓋咬合を放置することのリスクについて
子どもの過蓋咬合に対し、矯正治療を行わずに放置することで、以下のようなリスクが発生します。
・虫歯や歯周病になりやすい
・炎症や口内炎ができやすい
・奥歯が擦り減る
・下顎の成長を阻害する
・顎関節症になりやすい
・詰め物や被せ物が外れやすい
虫歯や歯周病になりやすい
過蓋咬合の場合、虫歯になるリスクが高くなります。
こちらは、歯の磨きづらさもありますが、過蓋咬合の場合、上の前歯が常に出ている状態のため、乾きやすく、虫歯のリスクがグンと上がってしまいます。
また、噛み合わせの影響で歯茎にも影響が出てしまい、歯周病になる可能性も高くなります。
炎症や口内炎ができやすい
過蓋咬合の子どもは、下の前歯が上の前歯に強く当たることで歯にダメージが加わったり、下の前歯が上の前歯の裏側の歯茎に当たったりすることがあります。
これにより、歯茎に炎症を起こしやすくなります。
また、炎症が口内炎の発症につながるおそれもあり、こちらは痛みや食事の制限、ストレスなどを引き起こします。
奥歯が擦り減る
噛み合わせが深いと、上下の歯が強く圧迫されるため、奥歯の表面が摩耗しやすいです。また、これによって奥歯のエナメル質がすり減り、象牙質が露出しやすくなることがあります。
こちらは、歯が痛みやすくなったり、虫歯になりやすくなったりすることにもつながります。
下顎が成長を阻害する
子どもの場合、過蓋咬合であることにより、下顎の成長を阻害してしまいます。
性差や個人差はありますが、約10歳〜15歳は特に下顎の成長が活発な時期です。
この時期に過蓋咬合があると、本来なら前方に成長するはずの下顎が、深く覆い被さる上の前歯に邪魔され、成長が阻害されてしまう可能性があります。
また、下顎の成長が阻害されることで、顎が後方に下がっている下顎後退や、上顎が前に出ている上顎前突など、骨格性の不正咬合を引き起こしやすくなってしまいます。
顎関節症になりやすい
過蓋咬合では、上顎で下の顎を後方に押し込める形になるため、下顎が自由に動かしにくくなります。
そのため、顎に負担がかかり、痛みが出たり、口を開きにくくなったりといった顎関節症の症状につながります。
また、顎関節症は身体が正常なバランスを崩してしまうため、肩やこめかみ、腰なども緊張した状態になります。
その他、噛む筋肉の上に通っている視神経に異常が出て、目の奥が痛んだり、違和感を覚えたりすることもあります。
詰め物や被せ物が外れやすい
噛み合わせが深いと、歯に強い力が掛かってしまいます。
その結果、虫歯治療などで詰め物や被せ物をしていたのに、それらが外れてしまうケースがあります。
一般的に虫歯の治療は、適正な噛み合わせの人を前提として行われるものです。
そのため、治療を終えた後は歯がちゃんと噛み合うか、チェックが行われます。
しかし、噛み合わせが深いなどの異常がある子どもは、噛み込んだ時にかかる力の方向が適切ではない場合が考えられます。
それにより、詰め物が取れるなどのトラブルが発生します。
まとめ
ここまで、子どもの過蓋咬合における概要や原因、放置することのリスクなどについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
過蓋咬合は、歯に直接ダメージを与えるだけでなく、さまざまな疾患につながる可能性もある症状です。
そのため、大きなトラブルが発生する前に、親御さんは歯科クリニックに相談し、ワイヤー矯正やマウスピース矯正などの治療を受けることも検討してください。