歯周病は、糖尿病や脳梗塞、心臓血管疾患など、さまざまな全身症状と関わりを持っています。
つまり、放置しているとさまざまな病気を発症するということです。
また、歯周病と関連性のある病気の一つに、緑内障が挙げられます。
ここからは、緑内障の概要や、歯周病が緑内障につながる仕組みについて解説します。
緑内障の概要
緑内障は、目から入ってきた情報を脳に伝達する視神経という器官に障害が起こり、視野が狭くなる病気です。
こちらの病気を発症すると、少しずつ見える範囲が狭くなっていきます。
通常であれば見えていた視野に、白いモヤがかかっていくようなイメージです。
また、こちらの症状は進行が非常に遅く、両方の目の症状が同時に進行することもほとんどありません。
そのため、気付いたときには重度にまで進行しているというケースが良く見られます。
ちなみに、緑内障は中高年の方に起こる代表的な病気です。
歯周病と緑内障の関連性について
歯周病は、さまざまな病気の原因になることがありますが、その病気には緑内障も含まれます。
歯周病による歯茎の炎症に端を発し、炎症物質や歯周病菌が全身を巡ることで、緑内障につながる仕組みは“緑内障ドミノ”とも呼ばれています。
では次からは、歯周病が緑内障につながるまでの流れを見てみましょう。
歯周病が腸炎や腸漏れにつながる
歯周病を発症し、歯茎が炎症を起こすことにより、炎症物質が血液中に入り込みます。
その後、血中内毒素の上昇、腸内フローラの乱れが起こります。
血中内毒素は、菌体の細胞壁に存在する毒素であり、身体に発熱を始めとするさまざまな生体反応を引き起こします。
腸内フローラは、いわば腸内に多種多様な細菌が密集している状態であり、こちらが乱れると腸炎、腸漏れにつながります。
ちなみに、腸炎は腸内で発生する炎症であり、腸漏れは腸粘膜の細胞と細胞の間に隙間が空き、異物や毒素が体内に漏れ出す症状です。
腸漏れを発症すると、免疫力が低下して感染症にかかりやすくなったり、さまざまな不調やアレルギー症状悪化の原因になったりします。
腸炎や腸漏れが糖尿病の原因に
歯周病から発症した腸炎や腸漏れが悪化すると、さらに血中内毒素が上昇し、腸だけにとどまらず、全身で慢性炎症が起こります。
また、こちらは前述の通り、免疫力の低下につながり、ゆくゆくはインスリン抵抗性を引き起こします。
インスリン抵抗性とは、インスリンに対する感受性が低下し、インスリンの作用が十分に発揮できない状態をいいます。
簡単にいうと、インスリンの効き具合であり、こちらの状態だと、筋や脂肪組織の糖取り込み能力が低下し、肝臓では糖新生が抑えられず、最終的には糖尿病を引き起こします。
止まらない緑内障ドミノの連鎖
糖尿病を引き起こした後、身体ではさまざまな問題が発生し、最終的に緑内障にまで辿り着きます。
具体的には以下のような流れです。
・ミトコンドリア機能障害
・概日リズムの乱れ
・エネルギー代謝ネットワーク異常
・神経毒
・中枢神経細胞死
・緑内障
それぞれの症状がどのようなものなのか見てみましょう。
ミトコンドリア機能障害
体内にある細胞の一つであるミトコンドリアに問題が生じ、細胞の働きが悪くなることで、さまざまな症状を示す状態です。
概日リズムの乱れ
ミトコンドリア機能障害になると、約1日ごとの周期で繰り返される体内時計である概日リズムに乱れが生じます。
エネルギー代謝ネットワーク異常
採り入れた栄養をエネルギーに変えることをエネルギー代謝といいますが、体内におけるこちらのネットワークに異常が出ると、十分に代謝が行われません。
神経毒
タンパク質の異常分解、それに伴う異常タンパク質の蓄積により、神経毒という神経細胞に作用する毒が発生します。
中枢神経細胞死
脳と脊髄のことを中枢神経系といい、これらを構成する細胞が死滅することにより、視神経にも十分な物質が供給されず、緑内障の発症、進行につながります。
歯周病を予防すれば緑内障も予防できる
緑内障には、先天的な目の構造によって発症するケースも多いですが、後天性(続発性)のものについては、歯周病を予防することが大きな対策になります。
また、歯周病予防の基本は、原因である悪玉菌が潜むプラークを徹底的に取り除くことです。
具体的には、毎日の歯ブラシでのブラッシングに加えて、デンタルフロス、歯間ブラシなどの補助器具を使用し、プラークコントロールを適確に行うことが挙げられます。
もちろん、定期的に歯科クリニックに通い、クリーニングや歯石除去なども受ける必要があります。
まとめ
ここまで、歯周病が緑内障につながる仕組みを中心に解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
決して直接的ではありませんが、歯周病が緑内障における入口の症状であることには間違いありません。
また、緑内障を発症する頃には、糖尿病を始めとするさまざまな病気や身体の機能障害などが出ていることが予想されるため、そうなる前にきちんとセルフケア、プロフェッショナルケアによって歯周病を予防しなければいけません。