歯科クリニックが取り扱う矯正治療と言えば、ワイヤーやブラケットなどの装置を用い、上下すべての歯を全体的に移動させる全体矯正が一般的です。
また歯科クリニックによっては、MTM(部分矯正)というものを取り扱っている場合もあります。
今回は、MTMの概要と主なメリットについて解説します。
MTMの概要
MTMは、Minor Tooth Movementの略であり、名前の通り部分的な矯正治療です。
具体的には、歯列全体の矯正や噛み合わせの調整は行わず、歯列に問題がある一部分のみを矯正します。
また部分矯正にはさまざまな矯正方法が用いられ、一般的なワイヤーやマウスピースだけでなく、インプラントやセラミックが採用されることもあります。
MTMは全体矯正と比較してメリットが多いため、近年はこちらを選択する方も増えています。
MTMの主なメリット7選
MTMには、主に以下のようなメリットがあります。
・費用が安い
・気になる部分だけ矯正できる
・治療期間が短い
・負担が少ない
・食事がしやすい
・痛みが少ない
・目立たない装置を適用しやすい
各メリットについて詳しく説明します。
費用が安い
MTMは全体矯正に比べて、治療にかかる費用が安いです。
具体的には最安で10万円、高くても70万円程度です。
歯並びの状態や使用する矯正装置の種類によって変わってきますが、上記の金額よりも高くなるケースは極めて稀です。
一方、全体矯正を行う場合、60~170万円ほどの費用がかかります。
そのため、一部の矯正治療で満足する場合、MTMの方が圧倒的にコストパフォーマンスは高いと言えます。
気になる部分だけ矯正できる
MTMのメリットとしては、気になる部分だけ矯正できるということも挙げられます。
例えば前歯の隙間を狭くしたい、下のガタガタになった歯並びを整えたいといった、ピンポイントな悩みにも対応できます。
全体矯正の場合、気になる部分以外の歯並びも変わってしまうため、手軽にコンプレックスを解消したい方にはMTMがおすすめです。
治療期間が短い
全体矯正と比べて治療期間が短いというのも、MTMのメリットの一つです。
通常、全体矯正では1~3年の治療期間がかかりますが、部分矯正は2ヶ月~1年と非常にスピーディーです。
そのため、歯並びは気になるものの、治療の時間を確保できないという方には向いています。
また結婚式など、大事なイベントまでに何とか歯並びをキレイにしたい方などにも、治療期間が短いMTMはおすすめだと言えます。
負担が少ない
ワイヤー矯正のMTMを行う場合、患者さんの負担が少ないというメリットも生まれます。
ワイヤー矯正は装置がつく範囲によって違和感に差が出ます。
当然、全体を覆って固定している全体矯正よりも、一部にワイヤーを装着するMTMの方が患者さんの負担は軽減されます。
マウスピース矯正の場合、装着による違和感にそれほど違いはありません。
またMTMを行う場合、基本的には抜歯が行われません。
歯を動かすスペースを確保するために、IPRと呼ばれる処置は行われることが多いですが、抜歯をしないため非常に安全です。
食事がしやすい
ワイヤー矯正のMTMには、ワイヤーを用いた全体矯正よりも食事がしやすいというメリットがあります。
ワイヤー矯正の装置は固定式であるため、食事の際も装置をつけたままになります。
しかし、全体矯正の場合は歯全体が装置で覆われているため、噛みにくさを感じたり、食べ物が詰まったりしやすいです。
その点、ワイヤー矯正のMTMは治療範囲が狭いため、天然歯を問題なく使用できる範囲が広く、食事はそれほど苦にはなりません。
ちなみにマウスピース矯正については、全体矯正であっても部分矯正であっても、食事の際に矯正装置を取り外します。
そのため、食事の快適さはどちらも変わりません。
痛みが少ない
MTMには、全体矯正と比べて痛みが少ないというメリットもあります。
MTMでは、歯の一部のみを移動させるため、全体の歯を動かす全体矯正よりも痛みが出にくいです。
もちろん痛みの感じ方には個人差がありますが、痛みに敏感な方はなるべく負担の少ないMTMを選んだ方が良いでしょう。
目立たない装置を適用しやすい
MTMのメリットとしては、目立たない装置を適用しやすいということも挙げられます。
なぜなら、それほど歯を大きく動かす必要がなく、マウスピース矯正が適用される機会も多いからです。
マウスピース矯正における最大のメリットは、その透明な見た目から、矯正治療をしていることが周りに気付かれにくいという点です。
一方全体矯正の場合は治療方法がより複雑になるため、ワイヤー矯正でしか治療できないなど、装置が限定されることも珍しくありません。
表側矯正の場合、矯正装置を歯の表面につけるため、矯正治療を受けていることがわかりやすくなります。
まとめ
MTMは、患者さんの細かい要望に応えられる矯正方法であり、全体矯正と比べて手軽に受けられるものです。
もちろん自由診療のため費用はある程度かかりますが、全体矯正よりはリーズナブルですし、身体にかかる負担も少ないです。
またさまざまな矯正方法を選べるため、歯科医師と相談しながら、もっとも自身に合った矯正方法を選択しましょう。