人は老化が進むと、身体機能や感覚器系、さらには心身や脳機能などさまざまな部分が衰えます。
年老いていくことはすべての生命体に不可避であり、若返ることはありません。
また、老化は歯並びに影響を及ぼす原因の一つでもあります。
今回は、老化が歯並びを悪化させる仕組みを中心に解説します。
老化が歯並びを悪化させる仕組み5選
年齢を重ねるにつれて、人は歯並びが悪化するリスクが高まります。
その仕組みとしては、主に以下のことが挙げられます。
・口周りの筋力の低下
・舌を押す癖
・虫歯、歯周病
・親知らず
・歯ぎしり
各項目について詳しく説明します。
口周りの筋力の低下
老化が進むことにより、口周りの筋力は徐々に低下していきます。
こちらは歯並びの悪化につながる可能性があります。
年齢を重ねると体力が落ちてきますが、同時に筋力も弱まります。
ここでいう筋肉には、口や舌などの筋肉ももちろん含まれています。
また歯並びというものは、頬と舌のバランスでキレイな状態を保っています。
そのため、舌の筋力が低下すると内側に傾き、頬の筋力が弱まると外側に傾く傾向にあります。
ちなみに、口周りの筋力の低下は、口角が下がることにもつながります。
つまり、より老けて見える原因にもなるということです。
舌を押す癖
高齢の方は、舌を押す癖が出やすい傾向にあり、こちらも歯並びの悪化につながるものの一つです。
老化が進むと舌を押す癖が出やすくなるのは、口腔機能が全体的に衰えるからです。
例えば唾液の分泌量が減少したり、口の周りや舌の筋力が低下したりすることが挙げられます。
また高齢の方は、噛む回数や口を動かすことが少なくなり、皮膚もある程度たるみます。
そのため、無意識に口を動かしやすく、いつの間にか舌で歯を押してしまうというケースも多く見られます。
慢性的に歯を押してしまうと、少しずつ前歯が前方に傾いていき、歯並びや噛み合わせは悪化します。
虫歯、歯周病
老化によって虫歯や歯周病のリスクが高まることも、歯並びが悪化する原因です。
高齢の方は唾液の分泌量が少なく、口内を十分に洗い流すことができません。
エナメル質も減少するため、必然的に虫歯のリスクは高くなります。
また歯茎の血行不良や免疫力の低下が原因で、歯周病を発症するケースも多いです。
さらに、老化が進むと歯の表面が摩耗し、プラークや歯石が形成されやすくなります。
これらは細菌の塊であり、虫歯や歯周病における最大の敵と言っても過言ではありません。
虫歯によって歯を抜いた部分があったり、歯周病で歯が動揺していたりすると、歯並びや噛み合わせには悪影響を及ぼします。
親知らず
ある程度年齢を重ねた方の中には、特に悪さをしなかったことが原因で、親知らずを長年放置しているという方もいるでしょう。
しかし、放置した親知らずは少しずつ手前の歯を押し、歯並びを悪くすることがあります。
また親知らずの影響を受けるのは、すぐ隣の歯だけではありません。
親知らずは生えるスペースを確保するために、手前の歯を少しずつ追いやっていきますが、最終的には歯列が全体的に手前へ移動してくることがあります。
そのため、特に問題がない親知らずであっても、早めに歯科クリニックで抜歯しておくことをおすすめします。
高齢になってからの抜歯は、若いときと比べて身体の負担も大きいですし、リスクも高くなります。
歯ぎしり
高齢の方は歯ぎしりをする可能性が高く、こちらが歯並びを悪化させることもあります。
高齢の方の歯ぎしりは、ストレスや不安、特定の薬剤の使用などによって起こります。
例えば収入や健康問題、家族の問題などのストレス源にさらされていると、無意識のうちに歯ぎしりを引き起こすことがあります。
また高血圧治療薬や抗うつ薬を服用している方は、副作用として歯ぎしりを引き起こすことが考えられます。
さらに睡眠障害や認知症なども歯ぎしりの原因であり、こちらは歯の表面の摩耗につながります。
歯が摩耗したり、形状が変化したりすると、必然的に歯並びや噛み合わせは悪くなります。
悪い歯並びが老化につながることも
ここまで解説してきたケースとは逆に、悪い歯並びが老化を加速させてしまうこともあります。
例えば歯周病にかかって歯茎が下がったり、歯が抜けたりすると、実年齢より老けて見えることが考えられます。
また歯並びが悪いと、口がしっかり閉じられなくなり、口周りのシワやたるみが目立ちやすくなる可能性もあります。
さらに、歯並びの悪化は栄養不足にもつながります。
こちらはやわらかいものばかり食べることにより、十分な栄養が吸収されなくなり、老化を早めてしまうという仕組みです。
まとめ
冒頭でも触れた通り、人は老化に抗うことはできても、それを完全に止めることはできません。
つまり老化に伴う歯並びの悪化も、基本的には避けられないものだということです。
ただし、老化に抗えるということは、歯並びが悪化するリスクはある程度軽減できるということになります。
そのため、日頃から歯並びが悪くなる習慣などは避けるようにしましょう。