インプラント治療は外科治療を伴うものですが、安全性については十分に考慮されています。
しかし、全身疾患を持っている方は治療のリスクが高まることがあり、中でも高血圧症の方は治療に伴うリスクが生じやすいです。
今回は、高血圧症の方のインプラント治療に関することを解説します。
高血圧症の概要
そもそも高血圧症とは、血圧が高すぎる状態が継続する疾患のことをいいます。
血圧は、心臓から送り出される血液が動脈の血管壁の内側を押す力です。
高血圧症を放置していると、心筋梗塞や脳卒中、腎臓病などの重篤な疾患につながることがあります。
しかし高血圧症は自覚症状が少なく、すぐに発症していることに気付けないケースも多いです。
ちなみに高血圧症の主な原因としては、過剰な塩分摂取や野菜・果物の摂取不足、肥満や過剰な飲酒などが挙げられます。
高血圧症の方がインプラント治療を受けるとどうなるのか?
高血圧症とインプラント治療は、非常に相性が悪いです。
そのため、治療時のリスクが生じやすくなります。
具体的には以下のようなリスクです。
・血圧が上がる
・歯肉増殖症を発症する
・血が止まらなくなる
各項目について詳しく説明します。
血圧が上がる
インプラント治療は安全ではありますが、歯茎の切開などを伴う外科治療を行うことは確かです。
そのため外科治療への耐性がない方や、そもそも歯科クリニック自体が苦手な方などは、治療時のストレスが強くなりやすいです。
またインプラント治療に伴うストレスは、血圧の上昇につながります。
場合によっては、治療の痛みをやわらげるための麻酔の段階で、すでに強いストレスを感じることもあります。
急激な血圧の上昇は、頭痛やめまい、吐き気や動悸などを引き起こすことが考えられます。
さらに、脳内の血圧を調整する機能が破綻し、脳への障害が発生する可能性もあります。
歯肉増殖症を発症する
高血圧症の方がインプラント治療を受けると、歯肉増殖症を発症するリスクも高まります。
歯肉増殖症は、歯肉肥大とも呼ばれるもので、わかりやすくいうと歯茎が腫れて盛り上がってしまう状態です。
一部だけの場合もあれば、広範囲に症状が見られることもあります。
高血圧症の方は、カルシウム拮抗薬というものを服用していることがありますが、こちらには歯肉増殖症を引き起こすという副作用があります。
また歯茎が腫れるとブラッシングがしにくくなり、インプラント治療後の十分なメンテナンスも困難になります。
つまりインプラント周囲炎を発症したり、インプラント治療をやり直したりする可能性が高まるということです。
血が止まらなくなる
高血圧症の方は、抗血栓薬という血がサラサラになる薬を服用していることもあります。
こちらを服用すると、出血した場合に血が止まりにくくなるため、ケガをしたときなどに重症化するリスクが高まります。
またこちらはインプラント治療時にも言えることであり、薬の作用によって血が止まらなくなると、凝固因子が減少して止血が追い付かなくなります。
最悪の場合、生命に危険が及ぶことも考えられます。
ちなみに高血圧症の方は、ただでさえ血が止まりにくい傾向にあります。
高血圧によって血管壁に慢性的な圧力がかかり、血管が傷つきやすくなるからです。
高血圧症の方はインプラント治療を受けられない?
前述したようなリスクがあることを考えると、「高血圧症の方はインプラント治療を受けられないのでは?」と思う方もいるでしょう。
実際のところは、そうであるともそうではないとも言えません。
曖昧な言い方になってしまいますが、治療ができることもあればできないこともあります。
高血圧症の方にインプラント治療を適用するかどうかの判断は、あくまで歯科医師ですが、治療する歯科クリニックの設備状況も判断基準に関係しています。
例えば歯科クリニックの中には、麻酔による血圧上昇に備え、点滴による麻酔採り入れているところもあります。
こちらは静脈内鎮静法と呼ばれるもので、身体をリラックスさせ、血圧の上昇を抑制する効果があります。
もちろん、すべての歯科クリニックで静脈内鎮静法が採用されているわけではありません。
それでも、こういった高血圧症への対策が施されている歯科クリニックであれば、治療できると判断される可能性が高いです。
ちなみに、高血圧症であることに関しては治療可能と判断された場合でも、他の疾患などがあれば治療を受けられないことがあります。
特に心臓疾患を患っている患者さんについては、多くの歯科クリニックがインプラント治療を禁忌としています。
まとめ
歯科クリニックでは、危険と判断される患者さんに対し、インプラント治療を行いません。
そのため、高血圧症の方は治療を受けられない可能性があります。
また仮に治療ができたとしても、治療中は十分な血圧コントロールが必要ですし、治療の負担も軽減しなければいけません。
そのため、一般的なインプラント治療と比べて、難易度が上がる可能性は極めて高いです。