虫歯や歯周病などの口腔疾患を未然に防ぐために、自宅や歯科クリニックでケアを行うのが予防歯科です。
また自宅でできるセルフケアには、ブラッシングの他に、予防歯科につながる食事も挙げられます。
今回はカルシウムの概要、カルシウムが持つ虫歯予防効果を中心に解説します。
カルシウムの概要
カルシウムは、簡単に言うと人の身体を構成するために必要な栄養素です。
厚生労働省のデータによると、成人男性は1日あたり700~80mmg、成人女性は650mg程度摂取するのが望ましいとされています。
またカルシウムは、人体の中で生成することはできません。
基本的には、食事から採り入れることになります。
ちなみにカルシウムの摂取効率は、他の栄養素とあわせることでさらに良くなります。
例えばビタミンDは、日光を浴びることにより人体で生成されるビタミンであり、適度に外出するなどすれば多く採り入れることができます。
カルシウムの虫歯予防効果とは?
虫歯は予防歯科でもっとも意識しなければいけない疾患の一つですが、カルシウムには以下のような虫歯予防効果があります。
・永久歯の強化
・再石灰化の促進
・ストレスの軽減
各項目について詳しく説明します。
永久歯の強化
カルシウムを積極的に摂取することで、永久歯の歯質は強化されます。
こちらは、歯の大部分を占める象牙質という部分の多くが、カルシウムで構成されていることが理由です。
また大人だけでなく、子どもの頃からカルシウムを摂取することも重要です。
永久歯がつくられる過程において、カルシウムは重要な役割を果たすため、幼い頃からしっかり摂取していれば強い永久歯が萌出します。
再石灰化の促進
再石灰化は、食事によって酸性になった口内を唾液によって中和し、虫歯を発症しにくい状態に歯を修復する作用です。
こちらの作用が追い付いていない場合、虫歯のリスクは高まります。
一方カルシウムを十分に摂取できている場合、再石灰化がスムーズに進むため、虫歯を予防しやすくなります。
ストレスの軽減
カルシウムには、ストレスを軽減してくれる作用もあり、こちらも間接的な虫歯予防につながります。
ストレスが強くなると、唾液が減少して虫歯のリスクが高まるからです。
強いストレスを受けると、自律神経が乱れて唾液の分泌量が減少します。
唾液には細菌を洗い流す効果、抗菌作用などがあるため、分泌量が減ると虫歯や歯周病にかかりやすくなります。
カルシウムの摂取量が十分であれば、緊張や興奮を鎮め、イライラや過敏症などのストレスを和らげることができます。
カルシウムの摂取は歯周病の改善にも効果的
カルシウムは虫歯だけでなく、歯周病の改善にも効果を発揮します。
具体的には、血液が固まるのをサポートする作用があります。
歯周病を発症すると、歯茎が熟れたトマトのようにブヨブヨした状態になり、少しの刺激で出血するようになります。
一方、カルシウムを日頃から摂取していれば、出血はある程度治まります。
止血には血液凝固因子と呼ばれると呼ばれる成分が関係していますが、カルシウムにはこれらの成分が十分作用するように活性化させる作用があります。
カルシウムが豊富な食品ついて
予防歯科に効くカルシウムは、主に牛乳やチーズなどの乳製品に含まれています。
その他小魚などの魚介類、ヒジキやワカメなどの海藻類、小松菜やチンゲン菜などの緑黄色野菜からも豊富に摂取できます。
ちなみに食品によってカルシウムの吸収率は異なるため、特徴を把握してさまざまな食品を摂取することが大切です。
また骨ごと食べられる小魚や干物などについては、良質なタンパク質や脂質も一緒に摂取できるため、積極的に食事に採り入れましょう。
リンもあわせて摂取するとさらに効果アップ
カルシウムの予防歯科効果を高めるためには、リンという成分もあわせて摂ることが重要です。
リンはカルシウムに次いで体内に多く存在するミネラルであり、エネルギーの貯蔵など、細胞の生命活動に必要不可欠な栄養素です。
主に豚肉や牛肉、卵や乳製品などタンパク質の多い食品に含まれていますが、カルシウムとあわせて摂取するのであれば、牛乳や乳製品から摂るのがおすすめです。
牛乳やその他の乳製品に含まれるリンは、カルシウムとのバランスが良く、効率的に歯を強化することができます。
一方肉や魚、卵などはリンの割合が多いため、過剰摂取には注意が必要です。
リンを過剰摂取してしまうと、体内でカルシウムとのバランスが崩れます。
そうすると骨から血液中にカルシウムが流れ出てしまい、逆に骨や歯が弱くなってしまう可能性があります。
まとめ
毎日ブラッシングさえしていれば、虫歯を予防できるのかというと、決してそうではありません。
確かに虫歯の直接的な原因はプラークですが、さまざまな栄養素を採り入れ、虫歯になりにくい歯をつくっておくことも大切です。
また今回はカルシウムをピックアップしましたが、ビタミンなど予防歯科に必要な栄養素はまだまだあります。
バランスの良い食生活を心掛けなければ、すべての栄養素を摂取するのは難しいです。