インプラントを装着することで、これまでの歯がない状態とは生活が一変します。
食事は問題なくできますし、特定の音が発音しにくかったり、食べ物が詰まりやすかったりすることもありません。
ではそんな限りなく天然歯に近いインプラントは、虫歯を発症することがあるのでしょうか?
今回はこちらの点を中心に解説します。
インプラントは虫歯を発症するのか?
天然歯に近い使用感を実現できるのがインプラントの魅力ですが、こちらは虫歯の発症リスクが一切ありません。
使用感や見た目は天然歯のようでも、構造はまったく異なるからです。
そもそも虫歯は、天然歯にのみ発症する疾患です。
仕組みとしては、まず口内に常在する細菌が食事から摂り込んだ糖分をエサにした副産物として、酸を生成します。
酸によって歯の表面のエナメル質が溶かされると、その下の象牙質にまで達し、痛みを感じます。
この段階にまで進むと、虫歯は治療しなければ完治しません。
さらに進行すると神経にまで達し、強い痛みを伴うようになり、最悪の場合は歯を抜くことも考えられます。
一方、インプラントは上部構造と呼ばれる人工歯、アバットメント、人工歯根で構成されています。
天然歯とは違い、エナメル質や象牙質といった部分は存在しません。
そのため、生成された酸が象牙質を溶かし、虫歯になるということがないのです。
オールオン4は特にリスクが少ない
インプラント治療は通常、1本や2本など少ない本数を埋め込むケースが多いです。
一方、オールオン4のようなすべての歯をインプラントにする治療であれば、すべての歯が人工物になるため、虫歯のリスクはさらに軽減されます。
1本や2本の場合、天然歯が残っている部分は虫歯になりますが、オールオン4の場合はそうではありません。
オールオン4は、顎の骨に4本の人工歯根を埋め込み、前歯から奥歯まで12本の人工歯を固定する治療法です。
しかし、すべての歯科クリニックでオールオン4を取り扱っているとは限らないため、注意が必要です。
虫歯に近い症状が出ることはある
インプラントは一切虫歯のリスクがありませんが、周辺の歯茎で虫歯に近い症状が出る可能性はあります。
具体的には歯茎の腫れや出血です。
重度にまで進行した虫歯は、歯だけでなく歯茎にも影響を与えることがあり、こちらの代表的な症状が腫れや出血です。
人工歯根を埋め込んだときにも、歯茎を切開するなどの外科治療を行うため、同じような症状に見舞われることがあります。
もし歯茎が腫れたり出血したりするのであれば、治療後は特に安静にして過ごさなければいけません。
そうすれば、時間の経過とともに少しずつ症状が和らいできます。
インプラント周囲炎には注意しよう
虫歯を発症することがないインプラントですが、治療後はインプラント周囲炎に気を付けなければいけません。
インプラント周囲炎は、インプラントやその周辺が歯周病に感染することで発症します。
インプラント自体は人工物ですが、その周囲の歯茎はもともと患者さん自身の身体にある組織のため、そこから細菌が入り込めば炎症が起こる可能性はあります。
またインプラント周囲炎を引き起こす原因としては、治療後のメンテナンス不足や喫煙などの不摂生、さらには歯ぎしりや食いしばりなどの悪癖が挙げられます。
ちなみに、インプラント周囲炎の症状は歯周病と似ていますが、症状の進行はインプラントの周囲炎の方が早いと言われています。
そのため、治療後は毎日丁寧にセルフケアを行い、歯科クリニックに通って検診を受けることが大切です。
インプラント治療後に注意したいその他のトラブル
インプラント周囲炎以外にも、インプラント治療後には気を付けたいトラブルがいくつかあります。
代表的なものは、インプラントの破損や顎のトラブルです。
例えば外部から強い刺激を受けたり、食いしばりなどで力がかかりすぎたりすると、インプラントが破損する可能性があります。
破損したインプラントは、当然そのまま使用し続けることができません。
また加齢などによって顎の骨が痩せると、埋入したインプラントがぐらつき、最終的に抜け落ちてしまうことも考えられます。
ちなみに顎の骨が痩せる原因としては、加齢の他にも食生活が挙げられます。
硬いものを避けてやわらかいものばかり食べていると、噛む習慣がつかずに顎の骨が痩せ細ってしまいます。
インプラント治療直後に硬いものを食べるのはもちろんNGですが、ある程度人工歯根が定着し始めたのであれば、硬いものを摂取できる食生活に改善しなければいけません。
まとめ
冒頭でも触れた通り、インプラントを装着した方は、非常に快適な生活を送ることができます。
もちろんそれは事実であり、インプラントの寿命も10~15年と長いですが、当然劣化はしていきます。
そのため、虫歯のリスクは一切ないものの、セルフケアやプロフェッショナルケアを怠ってはいけません。
もちろん歯を失ったときには、インプラントにこだわらず他の治療法を選択することも考えましょう。