インプラントは上部構造、人工歯根、アバットメントで構成されている補綴物です。
またこれらのパーツにはさまざまな素材が使用されますが、人工歯根には一般的にチタンが用いられます。
今回は、インプラントに使用されるチタンの概要やメリット・デメリットなどについて解説します。
チタンの概要
チタンは原子番号22番の元素であり、Tiと表記されます。
素材自体の色は銀灰色ですが、加工次第で美しい色を出すことが可能です。
私たちに身近な金属としては、銅や鉄がありますが、銅や6000年前、鉄は4000年前から使用されています。
これに対し、チタンはまだ発見されてから200年ほどしか経っていない新しい金属です。
現在は歯科分野だけでなく、航空機やロケットなどでも採用されるほど、その質の高さは認知されつつあります。
ちなみにチタンという名前は、ギリシャ神話に登場する巨人であるタイタンが由来とされています。
インプラントに使用されるチタンのメリット
人工歯根で用いられるチタンには、主に以下のようなメリットがあります。
・骨と結合しやすい
・軽い
・劣化しにくい
各メリットについて詳しく説明します。
骨と結合しやすい
チタンは骨と直接結合する性質があり、人体に使用しても拒絶反応が少ないです。
こちらがインプラントに使用される最大の理由です。
通常の金属は、お世辞にも骨との結合が強いとは言えません。
そのため、体内に入ると身体が拒絶反応を起こしてしまいます。
一方、チタンは身体が異物として認識するケースが少ないため、アレルギーを起こす心配は少ないです。
軽い
チタンのメリットとしては、他の金属よりも非常に軽量だということも挙げられます。
具体的には鉄の2/3程度、銅やニッケルの1/2程度の軽さであり、インプラントに使用することで、違和感なく快適に使用できます。
また軽量であることから加工しやすく、インプラント治療のような精密な作製が要求される補綴物にも向いています。
劣化しにくい
チタンは腐食に強い金属でもあり、長期間使用しても劣化しにくいです。
口内は唾液が常に存在し、食べ物や飲み物を口に入れることにより、酸性やアルカリ性に変化します。
チタンはこのような環境の変化に順応でき、長い間同じような状態を維持できます。
そのため、インプラントの人工歯根に使用することにより、入れ歯やブリッジなど他の補綴物よりも長い寿命の実現に寄与してくれます。
インプラントに使用されるチタンのデメリットは?
インプラントに使用されるチタンは、生体親和性の高いものであり、金属アレルギーを起こしにくいという話をしました。
しかし、金属である以上アレルギーのリスクはゼロではありません。
稀にチタンアレルギーを発症し、舌がピリピリしたり歯茎が腫れたりすることがあります。
もしインプラント治療後にチタンアレルギーが出てしまったら、残念ながらインプラントを撤去し、ジルコニアなど別の素材のインプラントに交換しなければいけません。
もしくは、インプラント以外の治療法を選択することになります。
またインプラントのチタンにおけるデメリットとしては、審美性も挙げられます。
チタンは金属であるため、インプラントの一部が歯茎から露出してしまうと、周囲の天然歯や歯茎との違いにより、審美性が悪化することがあります。
特に前歯のような目立つ位置にインプラントを埋入する場合、こちらの問題はとても重要になります。
金属が目立つことからそれがコンプレックスになり、人前で口を開けて笑えないなど、生活に支障が出ることも考えられます。
もちろんチタンの部分が見えなければ問題はありませんが、年齢とともに歯茎が下がるなどすると、露出するリスクは高くなります。
チタンインプラントの金属アレルギー対策
チタンを使用したインプラントでの金属アレルギーを予防したい方は、事前にパッチテストを受けましょう。
こちらは歯科クリニックや皮膚科のクリニックなどで実施されているもので、どの金属にアレルギーを持っているかがわかります。
もしチタンにアレルギーがあると発覚した場合は、最初からチタンを使用したインプラントを選ばないことでアレルギーを予防できます。
また、できる限り純度の高いチタンを採用するというのも一つの手です。
チタンには、純度というものが存在します。
純度が高ければ高いほどチタンの含有量が多く、純度が低ければ低いほどチタン以外の材料が多く混ざっているということになります。
もちろん、患者さん自身でチタンの純度を上げることはできませんが、材料について歯科医師に相談することは可能です。
まとめ
インプラント治療を受ける場合、チタンが使用されたものを適用するケースがほとんどです。
またチタンは数ある金属の中でも安全性が高いものですが、一切治療後のトラブルが起こらないというわけではありません。
またチタンの有無に関係なく、治療後はインプラント周囲炎などのリスクもあるため、ケアの仕方も含めてしっかり知識を持っておくことが大切です。