入れ歯の主な役割は、咀嚼機能の回復や発音・見た目の改善、残存歯と顎関節の健康維持です。
単純に、失った歯をカバーすることだけを目的としているわけではありません。
また入れ歯を装着することにより、老化も予防できるとも言われています。
今回は、入れ歯が老化を防ぐ理由を中心に解説します。
入れ歯が老化を防ぐ理由4選
入れ歯を装着することで老化が予防できる理由としては、主に以下のことが挙げられます。
・脳を活性化する
・筋肉を活性化する
・生活習慣病を防ぐ
・食事を楽しめるようになる
各項目について詳しく説明します。
脳を活性化する
入れ歯を装着すれば、これまで歯の一部もしくはすべてを失っていた方でも、よく噛めるようになります。
またよく噛むことにより、脳のさまざまな部位が刺激され、記憶や思考を司る海馬の機能も活性化すると言われています。
特に、入れ歯を装着してからある程度時間が経つと、噛む機能が完全に回復します。
これによって脳への刺激が増え、認知機能の低下を抑制できるという仕組みです。
ちなみに、入れ歯は装着してからすぐに噛めるようになるとは限りません。
口内の異物感や違和感に慣れるまでには、ある程度の時間がかかります。
つまり最初は入れ歯が苦手だと感じても、装着し続けることで噛めるようになり、老化も予防できるということです。
ただし、明らかに痛かったり噛み合わせの違和感があったりする場合、入れ歯に問題がある可能性が高いです。
そのため、すぐに歯科クリニックで調整してもらわなければいけません。
筋肉を活性化する
入れ歯は脳だけでなく、筋肉も活性化してくれます。
具体的には、口周りの筋肉の活性化です。
これまで歯を失っていた方は、咀嚼する機会が少なく、口周りの筋肉も使用していない可能性が高いです。
一方、入れ歯を装着すれば、よく噛めることから口周りの筋肉を使用する機会も増加します。
また咀嚼筋を使う頻度が増えることで、血流が良くなり、脳への酸素供給も増加します。
こちらは認知機能の低下抑制につながります。
さらに咀嚼によって顔の筋肉が鍛えられると、表情が豊かになり、若々しい印象を保つことができます。
老化は身体の中だけでなく、見た目でも進んでいくものです。
そのため、実年齢よりも若い見た目をキープすることが大切です。
生活習慣病を防ぐ
生活習慣病を防ぐことも、入れ歯が老化を阻止できる理由です。
入れ歯を使用し、しっかり噛むことで唾液の分泌量が増加すると、消化がスムーズになります。
その上満腹中枢も刺激されやすいため、食べすぎを防ぎ、生活習慣病を予防してくれます。
ここでいう生活習慣病とは、主に糖尿病や高血圧のことを指しています。
糖尿病は、血液中のブドウ糖の濃度が慢性的に高くなる疾患です。
インスリンというホルモンの働きが不足したり、分泌量が減ったりすることで起こります。
高血糖の状態が続くと、神経障害や網膜症、心疾患や脳疾患などさまざまな合併症を引き起こす可能性があります。
また高血圧は、血管にかかる圧力が高い状態が続く病気です。
自覚症状が少ないことからサイレントキラーとも呼ばれ、放置すると心臓病や脳卒中といった重大な病気のリスクを高めます。
食事を楽しめるようになる
入れ歯を装着し、しっかりものを噛めるようになると、以前よりも食事が楽しくなります。
こちらも、老化の予防につながる理由です。
食事の楽しさや美味しさを感じるとき、人はセロトニンという幸福ホルモンを分泌させます。
セロトニンが分泌されると、精神が安定し、ストレスや疲労などを軽減することができます。
また食事が楽しい、美味しいということは、食欲も増加するということになります。
食欲がある高齢者の方のほうが長生きするという研究結果もあるため、しっかり食事を摂ることはとても大切です。
さらに、食事の不自由が少なければ少ないほど、栄養バランスが取れた食生活を実現しやすくなります。
肉や魚、野菜や果物、豆類や乳製品などをバランス良く摂取することで、身体の機能を正常に保ち、疾患を予防します。
逆に入れ歯がないと老化が進むって本当?
歯を失っているにもかかわらず、入れ歯を装着しないままでいると、老けて見えることがあります。
こちらは口元を支えていた歯の構造がなくなることで、頬や唇が内側に沈み込み、頬がこけて見えたりシワが目立ちやすくなったりするからです。
また歯が抜けると、顎の骨も徐々に痩せていきます。
この現象は骨吸収と呼ばれるものですが、顎の骨が痩せると顔全体の輪郭にも変化が出ます。
その結果、年齢を感じさせる顔立ちになることがあります。
まとめ
入れ歯を入れることに抵抗がある方の中には、入れ歯=高齢者の象徴というイメージを持っている方もいるかもしれません。
しかし実際そのようなことはなく、むしろ入れ歯を入れないほうが老化は進んでしまい、実年齢より老けて見られやすくなります。
もちろん、入れ歯以外にも歯をカバーする治療法はあるため、他の治療法と比較しながら最適なものを選びましょう。
