歯科クリニックで提供される治療は、大きく保険診療のものと自費診療のものに分かれます。
このうち保険診療のものは保険が適用されるため、患者さんは本来の治療費の3割を負担するだけで済みます。
では、保険証がない場合、保険診療の費用負担は一体どうなるのでしょうか?
今回はこちらの点を中心に解説します。
【状況別】保険証がない場合の費用負担について
一口に“保険証がない”といっても、その状況はさまざまです。
例えば、以下のケースはすべて“保険証がない”に該当します。
・保険証を忘れた場合
・保険証をつくっている最中の場合
・保険証を紛失した場合
・保険証を持っていない場合
各状況における歯科治療の費用負担について詳しく説明します。
保険証を忘れた場合
保険証を持っているにもかかわらず、歯科クリニックで治療を受ける当日に保険証を忘れてしまったというケースがあります。
もちろん保険証がなくても歯科治療を受けること自体は可能ですが、この場合は一旦治療費をすべて支払わなければいけないケースが多いです。
つまり、保険は適用されないということです。
ただし、後日保険証を持参して再び歯科クリニックを訪れれば、自己負担分を差し引いた金額が返金されます。
このとき、治療を受けた月のうちに来院する必要があり、保険証とあわせて治療を受けたときに発行された領収書も提示しなければいけません。
保険証をつくっている最中の場合
新たな会社に勤め始めた方や、扶養家族から外れた方などは、今まさに保険証をつくっている最中ということもあります。
社会保険の保険証の発行は、2週間~1ヶ月程度かかることもあります。
そのため、歯科クリニックを訪れたとき、まだ手元に届いていないという可能性は十分にあります。
もちろん書類に不備などがあった場合、さらに発行までの期間は長くなります。
「来院するときには発行されている予定だったのに」という患者さんもいるかもしれません。
またこのようなケースでも、残念ながら歯科治療にかかる費用については、患者さんが一旦全額自己負担する必要があります。
もちろん申請中の保険証が手元に届き、同月内に歯科クリニックに提示できれば、自己負担分を除いた金額が返ってきます。
治療当日、あらかじめ保険証の手続き中であることを歯科クリニックに伝え、領収書を保管しておきましょう。
保険証を紛失した場合
保険証を持っていたにもかかわらず、紛失してしまって歯科クリニックでの治療日に持参できないというケースもあります。
このようなケースでも、歯科治療の費用は一旦患者さんの全額負担になります。
流れは前述した2つと同じで、一旦すべての費用を支払い、保険証が再発行されたら速やかに歯科クリニックに提示し、返金してもらいます。
また保険証を紛失している場合は、当然再発行の手続きも行わなければいけません。
紛失に気付いた時点で、健康保険組合や勤務先の担当部署に連絡し、再発行の手続き行いましょう。
健康保険証は、個人情報が記載されているものです。
そのため、再発行が遅れると医療費が自費診療になるだけでなく、情報を悪用されてしまうリスクもあります。
保険証を持っていない場合
そもそも保険証を持っていない方は、当然歯科クリニックで保険診療を受けることができません。
たとえ一般的な虫歯治療などを受ける場合であっても、すべての金額を患者さんが負担します。
また保険証がなく、今後つくる予定もない場合、もちろん一旦支払った費用が返金されることもありません。
そのため、例えば保険診療であれば1回数千円の虫歯治療でも、毎回数万円支払うことになります。
歯科クリニックで自費診療になる治療の例
保険証を持っていても持っていなくても、元々自費診療として提供されている治療は保険が適用されません。
例えば、インプラントやセラミックの補綴物、ホワイトニングや矯正治療は代表的な自費診療として挙げられます。
インプラントは、歯を失った部分に人工歯根を埋め込み、天然歯に近い噛み心地や見た目を回復する治療です。
またセラミックの詰め物や被せ物は、金属アレルギーのリスクがなく、天然歯に近い色や質感のため、審美性に優れています。
さらにホワイトニングは、歯を削らずに薬剤を使用して歯を白くする治療であり、矯正治療はワイヤーやマウスピースなどの装置で歯並びや噛み合わせを改善するものです。
これらの治療の共通点としては、治療よりも審美が目的だということです。
つまり見た目をキレイにするための治療は、基本的にすべて自費診療になるということです。
まとめ
理由はどうであれ、歯科クリニックでの治療当日に保険証を持参できない場合は、一度自費診療のような扱いになります。
それでも、ただ忘れたり発行の手続き中だったりする場合は、後日保険証を提示することで問題なく返金が受けられる可能性が高いです。
また歯科クリニックには、保険証があっても保険が適用されない治療もいくつかあるため、前もって確認しておくことをおすすめします。