虫歯治療を受けたことがある方はご存知かと思いますが、虫歯治療はその日の治療をぶっ通しで行うわけではありません。
治療の途中に、何度も患者さんが自身で口をすすぐ時間が設けられます。
では、この口をすすぐという作業を何度も繰り返す理由は何なのでしょうか?
今回はその理由を中心に解説します。
虫歯治療中に何度も口をすすぐ理由5選
虫歯治療中、処置がひと段落するたびに口をすすぐ理由としては、主に以下のことが挙げられます。
・口内の清潔さの維持
・治療の正確性向上
・患者さんの負担軽減
・治療のスピードアップ
・口内の冷却
各項目について詳しく説明します。
口内の清潔さの維持
虫歯治療中に何回も口内をすすぐ機会があるのは、口内の清潔さを維持しなければいけないからです。
虫歯治療を行う際は、皆さんが思っているよりも口内が汚れます。
例えば虫歯を削れば削りカスが出ますし、唾液も多く分泌されます。
さらに、ある程度の刺激によって出血し、血が口内に溜まることもあります。
これらは常に、患者さんの口内に差し込んだ機械で吸引されていますが、それだけでは完全に取り切れないこともあります。
虫歯治療を適宜中断し、患者さんが水で口をすすぐ時間を設けることで、これらの汚れは取り除かれ、清潔な状態を保てます。
治療の正確性向上
虫歯治療中に口内を何度も洗う理由としては、治療の正確性の向上も挙げられます。
先ほども触れたように、虫歯治療中は口内に汚れが溜まりやすいです。
またこちらは単純に口内が汚れるだけでなく、スムーズな虫歯治療を妨げることにもつながります。
口内が清潔でなければ、感染している歯質などを正確に削ることができません。
歯科医師は熟練の腕を持っているため、そのようなことはまずないかとおもいますが、あまりに汚れがひどいと削ってはいけない天然歯まで削ることも考えられます。
そのため、治療中に何度も口内をすすぎ、プラークや食べカスなどの障害物を除去することで、治療に必要な環境を整えます。
患者さんの負担軽減
患者さんの負担を軽減することも、虫歯治療中に何回も口内をすすぐ理由の一つです。
口内に唾液が溜まったり、不快なものが残ったりすると、患者さんは不快感を抱きます。
また歯茎があまり強くない方は、口内に血が広がっている感覚が強く現れることもあります。
口内をすすぐ工程を挟むことで、このような不安感を和らげ、患者さんの負担はある程度軽減されます。
治療のスピードアップ
虫歯治療中、患者さんが自身で口内をすすぐ行為は、治療のスピードアップにもつながります。
口内が清潔に保たれれば、歯科医師は治療に集中しやすくなります。
汚れがあることによって患部が見えにくくなり、集中力が低下することを防げるからです。
また集中しやすくなるということは、治療のスピードアップにつながるということになります。
こちらは、限られた保険診療の時間を有効活用するためにも有効です。
1日の虫歯治療をしっかり終えることができれば、トータルの治療期間が長くなるなどのトラブルも防止しやすくなります。
口内の冷却
虫歯治療中に患者さんが口をすすぐ行為には、口内の冷却という役割もあります。
虫歯治療中は、患者さんの口内を冷やさなければいけません。
これは、患者さんの口の中に入れられている機械で、水を流すことによっても行われています。
歯を削るときには、タービンという高速回転で切削できる機械を使用します。
タービンの高速回転は摩擦熱を生み出し、歯や神経に悪影響を及ぼす可能性があるため、水で冷やしてそのリスクを軽減させなければいけません。
つまり患者さんが何度も口をすすぐのは、いわば機械を使用して水を流すのと同じ効果があるということです。
タービンを使用し続ける限り、口内の摩擦熱も発生し続けるため、しっかり治療が終わるまで口内をすすいで熱を逃がす必要があります。
虫歯治療中、口内をすすげないタイミング
歯科クリニックでは、虫歯治療中に何度も口をすすがせてもらえますが、中には少し患者さんが我慢しなければいけないタイミングもあります。
一つは、虫歯を削った後に詰め物をしているときです。
詰め物は、歯が濡れていると接着力が弱まってしまいます。
そのため、詰め物独特のニオイや感覚が不快だったとしても、装着できるまでは少し我慢しなければいけません。
また2つ目は、根管治療を行っているときです。
根管治療は、重度の虫歯に対して行われる歯の神経の治療です。
口内の菌をほぼすべて取り除くことを目的に行われますが、このとき口をすすいでしまうと、唾液の中の細菌が根の中に入り込んでしまうおそれがあります。
まとめ
虫歯治療は、治療を成功させること、そして患者さんの負担を減らすことを優先的に行われています。
口内を何度もすすぐことも、基本的にはこれらを優先するために行われているということです。
患者さんの中には、何度も休憩することに対し「早く治療を進めてほしい」と思う方もいるかもしれません。
しかし、それでは治療が雑になったり、患者さんがつらい思いをしたりすることにつながります。