身体に良い調味料と聞いて、真っ先にお酢を思い浮かべるという方は少なくないかと思います。
健康食品にも、お酢が含まれているものが多数存在し、日々意識して摂取しているという方もいるでしょう。
しかし、お酢は虫歯のリスクを高めるものとされています。
今回はこちらの理由を中心に解説します。
お酢が虫歯につながりやすい理由
お酢が虫歯を引き起こしやすいのは、酸蝕症のリスクが高いからです。
お酢はpHが低く強い酸性であるため、歯の表面に存在するエナメル質という硬い組織を溶かしてしまうことがあります。
こちらを酸蝕症といいます。
酸蝕症の主な症状としては、歯が薄くなることや光沢がなくなること、冷たいものや熱いものがしみる知覚過敏などが挙げられます。
さらに、歯が黄色く見えたり、歯と詰め物との間に隙間ができたりすることもあります。
そしてもっとも厄介なのが、虫歯のリスクを高めるということです。
酸蝕症が進行すると、歯の表面に小さなくぼみやひび割れが形成され、そこから虫歯菌が入り込んで虫歯を引き起こしやすくなります。
空腹時や就寝前にお酢を摂取するのは特に危険
お酢には酸蝕症が引き起こす虫歯のリスクがあるという風に解説しましたが、空腹時や就寝前にお酢を摂取するのは特に危険です。
お酢が含まれる健康食品の中には、空腹時に飲んでから食事を摂ることで血糖値の上昇を抑えたり、中性脂肪がつきにくくなったりするものもあります。
しかし空腹時は口内の唾液の分泌量が少ないため、お酢の酸が中和されにくく、歯がダメージを受けやすくなります。
つまり、酸蝕症や虫歯のリスクが高まるということです。
また、こちらは就寝前にも同じことが言えます。
寝ている間は口内が乾きやすいため、就寝前にお酢を摂取してしまうと、寝ている間に酸蝕症の発症・進行リスクが上昇します。
お酢を使ったデンタルケアについて
デンタルケアと言えば、自宅で行うセルフケアや歯科クリニックで行うブラッシング指導、スケーリングなどのプロフェッショナルケアが挙げられます。
またその他にも民間療法として、お酢を使ってブラッシングをするという方法が流行っていた時期がありますが、こちらはおすすめできません。
お酢でブラッシングをすると、エナメル質が溶けるリスクが高まります。
さらに、一度溶けたエナメル質は二度と元に戻らないため、歯の健康を大きく損ないます。
ちなみに、お酢以外にもレモン汁でブラッシングをするという方法がありますが、こちらもお酢でのブラッシングと同じようなデメリットがあります。
お酢が歯に与えるメリットとは?
お酢は酸蝕症や虫歯のリスクを高めるものですが、歯に対するメリットを発揮することもあります。
具体的には、抗菌作用やプラーク・歯石の除去作用が期待できます。
お酢に含まれる酢酸という成分は、口内の細菌の繁殖を抑える抗菌作用があるという研究報告が存在します。
また酢の酸性が歯に付着したプラーク、歯石をやわらかくするという研究結果もあります。
歯石は基本的にはブラッシングで除去できないため、やわらかい状態にできるというのはセルフケアを行う上でのメリットです。
しかし、お酢の抗菌作用はあくまで限定的であり、酸蝕症のリスクを無視できるほど絶大な効果があるわけではありません。
さらに、プラークや歯石をやわらかくできるとはいえ、過剰なお酢の使用は歯のエナメル質を溶かすことにつながります。
お酢による虫歯のリスクを軽減する方法
ダイエット効果や美容効果などが期待できるお酢は、多くの方が意識して摂取しているかと思います。
しかし何も考えずに摂取していると虫歯のリスクが高まるため、メリットを享受しつつデメリットを回避するには、摂取の仕方を工夫しなければいけません。
まず、お酢を原液で飲むことは避けましょう。
原液のお酢はかなり酸味が強いため、そのまま飲む方はあまりいないかと思いますが、飲む際は水や炭酸水で数倍に薄めて摂取するのがおすすめです。
またお酢を含む健康ドリンクなどを飲む際は、ストローを使用し、お酢が直接歯に触れる時間を減らすことも大切です。
さらに、お酢を飲んだ後はすぐに水やお茶で口をすすぎ、口内の酸を洗い流します。
お酢を使った料理を食べる際は、食事中にも適宜水やお茶を摂取すべきです。
ちなみに、お酢のような酸性の飲食物を摂取した直後は、エナメル質が一時的にやわらかくなっています。
そのため、すぐにブラッシングをすると歯が削れやすくなってしまい、酸蝕症や虫歯のリスクは特に高くなります。
このようなリスクを減らすには、食後30~1時間程度経ってからブラッシングをするのが得策です。
まとめ
お酢が身体に良いことは事実ですが、歯にとってはお世辞にも良いものとは言えません。
特にお酢の原液は酸蝕症や虫歯のリスクが極めて高いため、摂取するときは注意してください。
またお酢を使った民間療法のブラッシングも、基本的には行うべきではありません。
正しいブラッシングの方法やその他の虫歯予防の方法については、歯科クリニックの医師にアドバイスをもらうことをおすすめします。