虫歯治療は、決して危険なものではありません。
歯科医師や歯科衛生士が細心の注意を払い、患者さんの負担が少なくなるような形で進められます。
しかし、場合によっては虫歯治療中、気分が悪くなってしまうことがあります。
今回はこちらの主な原因について解説します。
虫歯治療中に気分が悪くなる原因6選
虫歯治療中に気分が悪くなる原因としては、主に以下のことが挙げられます。
・血管迷走神経反射
・局所麻酔薬に含まれるアドレナリン
・過換気症候群
・低血糖、貧血
・歯科恐怖症
・アナフィラキシー
各項目について詳しく説明します。
血管迷走神経反射
虫歯治療中にもっとも頻繁に見られる体調不良の原因が、この血管迷走神経反射です。
治療に対する強い緊張、恐怖心、あるいは痛みによる刺激がトリガーとなり、自律神経のバランスが急激に崩れることで発生します。
本来、緊張時には交感神経が優位になりますが、過剰なストレスがかかると反動で副交感神経が強く働いてしまいます。
その結果、心拍数が減少して血管が拡張し、血圧が急降下します。
脳への血流が一時的に不足するため、「頭がふわふわする」「目の前が暗くなる」「冷や汗が出る」といった症状が現れ、ひどい場合には失神に至ることもあります。
これを防ぐには、治療前に体調を整え、空腹を避けること、また歯科医師に不安を伝えてリラックスできる環境を整えてもらうことが重要です。
局所麻酔薬に含まれるアドレナリン
歯科用の局所麻酔薬には、多くの場合アドレナリン(エピネフリン)が添加されています。
こちらは血管を収縮させて麻酔薬がその場に留まるようにし、効果を長持ちさせるとともに、出血を抑える役割があります。
しかしこのアドレナリンが血液中に吸収されると、心臓を活性化させる作用があるため、動悸や血圧上昇、指先の震えや気分の高揚、不安感を引き起こすことがあります。
特に高血圧症の方や心臓に疾患がある方、極度に緊張している方は、この作用を強く感じやすい傾向にあります。
もし過去に麻酔で動悸がした経験があるのであれば、アドレナリンを含まない麻酔薬への変更を相談することが可能です。
過換気症候群
過換気症候群は、「痛いかもしれない」「何をされるかわからない」というパニックに近い不安や極度の緊張から、呼吸が浅く速くなってしまう状態です。
過呼吸とも呼ばれます。
こちらは必要以上に酸素を取り込み、二酸化炭素を吐き出しすぎることで、血液がアルカリ性に傾くという仕組みです。
症状としては、息苦しさだけでなく手足のしびれや筋肉のこわばり、強い不安感やめまい、吐き気が現れます。
また過呼吸の場合、「空気が吸えない」と感じてさらに激しく呼吸してしまう悪循環に陥りやすいため、注意が必要です。
治療中に「苦しい」と感じたら、一旦手を挙げて中断してもらい、ゆっくりと吐くことを意識した深い呼吸を行うことで症状を落ち着かせることができます。
低血糖、貧血
虫歯治療そのものとは別に、受診時の身体状態が原因で気分が悪くなるケースも少なくありません。
特に虫歯治療は「痛いのが嫌だから」と食事を抜いて受診する方がいますが、空腹状態での治療は非常に危険です。
低血糖状態では脳のエネルギーが不足していて、治療のストレスに耐える力が低下しています。
そこに麻酔や痛みの刺激が加わると、冷や汗や震え、意識が遠のくといった症状が出やすくなります。
また元々貧血気味の方は、治療中の姿勢から急に起き上がった際の起立性低血圧なども重なり、気分の悪化を招くことがあります。
受診前には必ず適度な食事を摂り、睡眠不足を避けることが推奨されます。
歯科恐怖症
過去に歯科治療でひどい痛みを経験したなどのトラウマがある場合、歯科クリニックの独特な臭いやキーンという切削音を聞くだけで、脳が危険と判断して防衛反応を起こします。
これは心理的なストレスが自律神経に直接影響を与える歯科恐怖症というもので、診察台に座っただけで吐き気や動悸が止まらなくなることもあります。
このような場合は、通常の治療よりも精神的なケアが優先されます。
最近では、笑気麻酔などを用いて、リラックスした状態で治療を受けられる歯科クリニックも増えています。
自身の不安が心理的なものであると自覚している場合は、事前にカウンセリングを丁寧に行ってくれる歯科クリニックを選ぶことが改善への近道です。
アナフィラキシー
頻度は非常に低いですが、局所麻酔薬そのものや、治療で使用するラテックス、防腐剤などに対するアレルギー反応が原因となることがあります。
軽度であれば皮膚の痒みや蕁麻疹で済みますが、重度のアナフィラキシーになると、急激な血圧低下や呼吸困難、全身の脱力感などが起こり、非常に強い気分の悪さを感じます。
もし麻酔を打ってから数分以内に全身の痒みや息苦しさを感じたのであれば、直ちに歯科医師に伝えなければなりません。
また以前に薬で発疹が出たことがある、あるいは重度のアレルギー体質である場合は、事前の問診で詳細に伝えることが安全な治療のために不可欠です。
まとめ
冒頭でも触れた通り、虫歯治療は決して危険なものではありません。
むしろ、もっとも安全かつ確実に虫歯を治す方法です。
しかし、患者さんの心身の状態によっては、強い不快感や体調の悪化などが起こる可能性はあります。
そのため、歯科医師に質問するなどして、前もってどのような対策が必要なのかについては理解しておく必要があります。

