虫歯の痛みに悩まされている方の中には、通院せずに我慢してしまう方も多いです。
また我慢し続けた結果、痛みが消えて「虫歯が治った」と感じる方もいます。
残念ながらこちらは勘違いであり、虫歯が自然に治ることはありません。
今回は、虫歯が治ったと勘違いする主な理由について解説します。
虫歯が自然に治ることはない
虫歯は一度歯に穴が開いてしまうと、自然治癒することはありません。
こちらの仕組みには、歯の組織の性質が関係しています。
歯には内部の神経である歯髄を除き、血流が存在しません。
そのため、免疫機能や再生能力も存在せず、一度発症した虫歯を自然に治すことはできません。
また歯の組織は、虫歯によって欠けると二度と元に戻らないという性質を持っています。
つまり虫歯による変色や穴などについては、そのまま残ってしまうということです。
虫歯になる前の歯の状態に戻らなければ、“虫歯が治った”とは言えません。
ちなみに虫歯を治す方法は、歯を削って患部を取り除く方法のみです。
市販薬によって治すこともできません。
市販薬が効かない理由としては、虫歯の直接的な原因がプラークであることが挙げられます。
ドラッグストアなどで販売されている市販薬は、鎮痛作用や抗炎症作用など、あくまで虫歯の症状を緩和するためのものです。
虫歯を根本から治せるわけではないため、治療せずに薬に頼っても、いずれは治療を受けなければいけません。
虫歯が治ったと勘違いする理由4選
実際には治っていないにもかかわらず、治ったと勘違いしてしまう理由としては、主に以下のことが挙げられます。
・神経が死滅した
・痛みに慣れた
・体調が良くなった
・知覚過敏が治った
各項目について詳しく説明します。
神経が死滅した
これまでひどい虫歯の痛みに悩まされていたにもかかわらず、いつの間にかその痛みがなくなっているということがあります。
こちらは虫歯が治ったのではなく、虫歯菌によって神経が死滅したことで、痛みを感じなくなっただけです。
神経は、外部からの刺激を知覚するためには必要不可欠なものです。
そのため、死滅すると食事やブラッシングのときの刺激を感じることができず、痛みも感じなくなります。
ただし、神経が死滅しても虫歯菌は口内に残り続けます。
このことから、痛みが完全に消えて歯の大部分を失ったとしても、今度は虫歯菌が全身疾患などを引き起こすことがあります。
痛みに慣れた
単純に痛みに慣れたことも、虫歯が治ったと勘違いする理由の一つです。
軽度の虫歯であっても、歯に穴が開いている場合は、そこに触れたときに痛みを感じます。
しかし、重度の虫歯のように、何もしなくても常に強い痛みが出るような状態ではありません。
そのため、身体が徐々に痛みに慣れてきて、当初感じていたような痛みは感じなくなります。
また重度の虫歯であっても、痛みの出方や感じ方には個人差があります。
痛みに強い方であれば、このような激しい痛みにも少しずつ順応し、治ったと勘違いすることが考えられます。
体調が良くなった
以前は非常に強い歯の痛みがあったものの、少しずつ引いてきたという場合、体調が以前より良くなっただけの可能性もあります。
体調と虫歯の痛みは密接な関係にあります。
例えば風邪による発熱や免疫力の低下により、虫歯菌が活性化すると、虫歯の痛みが強くなることがあります。
また副鼻腔に炎症や粘液が溜まり、歯の神経を圧迫すると、同じように強い痛みが生じます。
体調が良くなり、上記のような症状が改善されると、必然的に虫歯の痛みも弱くなることが考えられます。
しかし、実際は体調が悪いときの痛みが強すぎただけで、体調が良くなってもある程度の痛みは継続しています。
もちろん、風邪や副鼻腔炎が治ったからといって、追随するように虫歯が治ることはありません。
知覚過敏が治った
知覚過敏が治ったことを、虫歯が治ったと勘違いするケースもあります。
知覚過敏は、歯の象牙質が露出した部位などに冷たいものが触れたとき、ズキッとした痛みが走るというものです。
このとき感じる痛みは、食事によって虫歯が痛みときの感覚に似ています。
また知覚過敏は虫歯とは違い、症状が軽度な場合は自然に治ることがあります。
そのため、知覚過敏による痛みが引いたとき、虫歯の痛みを感じなくなったと感じることがあります。
ちなみに知覚過敏が自然に治る理由は、虫歯と違って細菌感染しているわけではないからです。
加齢などの理由で歯茎が下がると、象牙質が露出して刺激を感じやすくなり、知覚過敏を発症します。
ただし歯周病が原因で知覚過敏が起こっている場合は、基本的に自然治癒することがありません。
まとめ
何度も言うようですが、ある程度進行した虫歯が自然に治るということは絶対にあり得ません。
自然に治るのは、初期段階でまだ歯に穴が開いていない虫歯だけです。
そのため、たとえ痛みが消えたとしても、早急に歯科クリニックに通わなければいけないという事実は変わりません。
むしろ、痛みが消えた虫歯は極めて危険な状態になっている可能性があるため、なるべく早く治療すべきです。