歯周病の主な症状として挙げられるのは、歯茎の炎症や出血、歯のぐらつきや脱落といったものです。
これらは口内環境を著しく悪化させる厄介な症状ですが、歯周病は口内以外にも弊害が出るおそれがあります。
今回は、歯周病を発症すると太りやすくなる主な理由について解説します。
歯周病を発症すると太りやすくなる理由5選
歯周病の方は、そうでない方に比べて太るリスクが高いです。
その理由は主に以下の通りです。
・炎症の範囲の拡大
・咀嚼力の低下
・ストレス
・睡眠不足
・喫煙
各項目について詳しく説明します。
炎症の範囲の拡大
歯周病の方は、歯茎だけでなく全身へと炎症の範囲が拡大することがあります。
こちらが太りやすくなり理由の一つです。
歯周病が進行すると、口内の歯周病菌が血流に乗って全身に広がり、炎症を引き起こします。
この炎症が脂肪の代謝を妨げ、肥満のリスクを高めるという仕組みです。
もう少し詳しく説明すると、まず歯周病によって歯茎の炎症が起こり、炎症性サイトカインでありTNF-αが分泌されます。
炎症性サイトカインとは、炎症が起こることで分泌されるタンパクのことを指しています。
またTNF-αは、脂肪細胞を肥大しやすくし、脂肪を蓄えやすくなると考えられています。
そのため、普段運動をしているという場合でも、歯周病の症状があると太りにくくなってしまいます。
ちなみに肥満体型の方は、脂肪細胞でつくられるTNF-αが歯を支える歯槽骨を溶かし、歯周病を発症・進行させる作用があります。
つまり歯周病の方は太りやすくなり、太っている方は歯周病を発症させやすくなるということです。
咀嚼力の低下
咀嚼力が低下することも、歯周病を発症すると太りやすくなる理由の一つです。
歯周病の症状がひどい場合、食事の際には必ずと言って良いほど出血が見られ、食べられるものも限られてきます。
また歯茎がブヨブヨで歯の安定感がない場合、硬いものや噛み応えのあるものなどはなかなか食べられません。
そのため、なるべくやわらかい食事を摂ろうと考えます。
しかし、やわらかい食品には高カロリーなものも多く、このような食生活を続けていると肥満や体重増加につながりやすくなります。
きちんと咀嚼をすることは、体型を維持するにあたってとても重要なことです。
よく噛むことで脳の満腹中枢が刺激されるため、少量の食事でも満足感が得られやすくなります。
さらに噛む回数が増えれば増えるほど、胃や小腸に血液を送る動脈の血液量が増加し、消化活動が活発になって食後の消費カロリーも大きくなります。
ストレス
歯周病を発症すると太りやすくなる理由としては、ストレスも挙げられます。
前述の通り、歯周病の方は食事に制約が出やすかったり、食生活が乱れたりしてしまいがちです。
また食事に制限があることや常に出血していること、歯茎の違和感などから、ストレスも抱きやすくなります。
ストレスや不規則な生活で自律神経が乱れると、体内の脂肪の燃焼と貯蔵をコントロールしている交感神経の働きが低下し、アドレナリンの分泌量が減少します。
すると活動量も落ち、消費カロリーが減少するため、必然的に脂肪がつきやすい身体になってしまいます。
また副腎皮質から分泌されるホルモンであるコルチゾールの分泌の変動にもつながり、血糖値の乱高下を起こすようになります。
血糖値が急激に上がったり下がったりすると、インスリン抵抗性も上がりやすくなり、さらに肥満のリスクは高まります。
睡眠不足
歯周病を発症している方の中には、睡眠不足の方も多いです。
睡眠不足が慢性化することにより、身体の修復機能が低下し、歯茎の炎症が進行しやすくなるからです。
また睡眠不足は唾液の分泌量を減少させたり、自律神経が変化させたりするため、歯周病の発症リスクを高めます。
さらに歯周病でありなおかつ睡眠不足の方は、太りやすくなる可能性も高いです。
睡眠時間が短いと、食欲抑制ホルモンであるレプチンが減少し、逆に食欲増進ホルモンであるグレリンが増加します。
喫煙
歯周病のリスクファクターの一つに喫煙が挙げられます。
喫煙により、口内環境が乱れて歯周病を発症する方も多いですが、こちらの習慣も太りやすくなる原因の一つです。
喫煙によって男性ホルモンが刺激されると、女性ホルモンの働きが弱まるため、内臓脂肪型の肥満になりやすいです。
しかし、禁煙もまた肥満につながりやすいため、注意が必要です。
禁煙するとニコチンによる食欲抑制効果が失われますし、基礎代謝が落ちたり口がさみしくなったりするからです。
そのため、歯周病と肥満の両方を防ぐためには、最初から喫煙しないことが理想的です。
まとめ
歯周病を発症しているまたはその疑いがある方は、“歯周病=口内の病気”という考えを持たないようにしましょう。
歯周病は本来口内への悪影響を与える疾患ですが、万病のもとと言われるくらい全身疾患のリスクも高い病気です。
「歯茎が以前より腫れているように見える」「ブラッシングのときの出血がひどい」といった違和感を覚えたら、すぐに歯科クリニックに相談してください。