現代では、虫歯を歯科クリニックで治療するという文化が当たり前になっています。
しかし、これらの文化は、当然遥か昔から存在していたわけではありません。
では、昔の人も虫歯を発症していたのでしょうか?
また遥か昔、虫歯治療はどう行われていたのでしょうか?
今回はこれらの点を中心に解説します。
遥か昔でも虫歯を発症していた?
虫歯治療の歴史は、地球規模で見ると決して長くありませんが、虫歯自体は1万前から存在していたとされています。
縄文時代、人は狩猟や漁労、植物の最終を主な生活手段としていました。
またドングリやクルミといった硬い植物も食べていたため、虫歯の発症率は現代よりも低く、全体のわずか8%程度だったと推定されています。
また弥生時代に突入すると、縄文時代よりも農耕が盛んになり、米やその他の穀物を食べる機会が増加しました。
穀物には糖類が含まれているため、この時代から少しずつ虫歯の発症率は高まり、全体の16~20%にまでなったと言われています。
ちなみに現代は、食生活の変化や甘いもの増加といった理由から、さらに虫歯の発症率は高くなっています。
虫歯治療はいつから存在する?
現代のものとはかなり異なりますが、虫歯治療に該当するものもかなり昔から存在します。
例えば古代エジプト(紀元前3,000年頃)では、すでに歯科治療が行われていました。
こちらはミイラの研究により、金属製のワイヤーで歯を固定したり、ハチミツやハーブで歯の痛みを治療したりといった記録が見つかったことで判明しました。
また古代ローマ(紀元前753年頃)では、主に抜歯を中心に虫歯を治療していましたが、金冠を装着したりブリッジで歯をカバーしたりといった技術も存在しています。
ちなみに中世ヨーロッパ(476年~1453年)では、現代のように歯科医師ではなく、理髪師が虫歯の抜歯を担当するのが一般的でした。
日本における歯科治療は、平安~鎌倉時代頃に始まったとされていますが、基本的に治療は朝廷でしか行われないものでした。
民間では巫女が抜歯を行うなど、現代と大きく異なる治療が行われていたことがわかっています。
日本の歯科医師の歴史について
幕末に突入すると、開国とともに日本にはさまざまな西洋の歯科技術が伝えられるようになりました。
海外から外国人歯科医師も多く来日し、これを機に日本の医師たちは歯科医学を学び始めました。
当時はまだ歯科専門の医師が存在しませんでしたが、1876年、初めて西洋医学をベースにした最初の歯科医師が誕生します。
その後、1883年に規制が制定され、歯科が独立した正式な専門科目となりました。
さらに1906年、医師法が制定されるとともに歯科医師法も創設され、その翌年に歯科を専門的に学習する私立共立歯科医学校が創立されています。
江戸時代の虫歯治療における特徴
前述の通り、日本で歯科医師という身分が確立され始めたのは、江戸幕府の末期です。
それ以前の江戸時代においては、当然現代のような機器は存在しないため、基本的に虫歯はすべて抜歯で対応していました。
もちろん麻酔もなく、かなりの激痛が伴ったことが予想されます。
麻酔の代わりに、お酒を飲んで感覚を鈍らせることもあったと言われています。
また先ほど歯科専門の医師は1876年まで存在しなかったと言いましたが、江戸時代には口内の治療を行う口中医、入れ歯をつくる口中入歯師が存在しました。
その他、現代では考えられませんが、大道芸人が虫歯を抜歯することもあったそうです。
具体的には、大道芸を披露しながら抜歯を希望する方を募り、その場で歯を抜いていました。
ただし、江戸時代の虫歯治療も、基本的にはその当時の身分が高い方しか受けられませんでした。
庶民は神頼みや漢方などにより、何とか痛みを和らげた方が多かったようです。
ブラッシングの歴史について
虫歯を予防するにあたって欠かせない習慣であるブラッシングですが、古代インドや古代ローマの頃にはあったとされています。
古代インドでは、端を噛み潰した木の小枝でブラッシングをし、古代ローマでは動物の骨や卵の殻を焼いた灰で歯を磨いていました。
また中国では、959年頃の歯ブラシが見つかっていて、かなり昔からブラッシングが行われていたことがわかっています。
ちなみに、家庭用の歯ブラシが高価だったヨーロッパにおいて、現在のような歯ブラシが使用されるようになったのは17世紀になってからです。
昔は虫歯で亡くなることがあった?
現代はほとんどありませんが、昔は虫歯で亡くなるケースも決して珍しくはありませんでした。
なぜなら、治療方法が確立されていない上に、抗生物質も存在しなかったからです。
具体的には、虫歯の穴から顎の骨に入り込んだ虫歯菌が、心筋梗塞や脳梗塞を起こすケースが散見されました。
その他、血管に虫歯菌が入り込み、敗血症になるケースも多かったとされています。
まとめ
虫歯治療や虫歯予防という観点でいうと、現代を生きる方々は非常に恵まれていると言えます。
理由としては、虫歯治療の方法が確立されている上に数多くの症例がありますし、歯科クリニックも至るところで開院されていることが挙げられます。
そのためこれだけ恵まれた環境において、虫歯を放置したり、検診を怠ったりするのは非常にもったいないことです。