歯周病予防は、年齢や性別を問わず誰もが行うべきセルフケアと言えます。
また歯周病予防には、歯や歯茎だけでなく歯周ポケットのケアも必要ですが、こちらを患者さん自身が清掃することはできるのでしょうか?
今回は歯周ポケットの概要とあわせて、歯周ポケットの清掃に関することを中心に解説します。
歯周ポケットの概要
歯周ポケットは、歯と歯茎の間にできた溝のことです。
健康な状態の歯と歯茎の境目には、歯肉溝と呼ばれる1~3mmほどの浅い溝が存在します。
こちらにプラークが溜まり、細菌が増殖することで歯茎に炎症が起こります。
また炎症が進行すると、歯と歯茎の間に隙間ができ、溝が深くなります。
この深くなった溝が歯周ポケットです。
ちなみに歯周ポケットの深さは1~3mmが健康、4mm以上が歯周病の初期段階とみなされます。
さらに5mm以上になると、歯周病が進行している可能性が高く、歯を支える骨にも影響が出始めています。
歯周ポケットのケアを行うメリット
歯周ポケットのケアを行うメリットとしては、主に歯周病や口臭の改善、全身の健康維持などにつながることが挙げられます。
歯周ポケットをキレイにすることで、プラークや細菌を取り除くことができ、歯周病のさらなる進行を防ぎます。
また歯茎の炎症も改善されますし、抜歯リスクの軽減にもつながります。
さらに、歯周ポケットは細菌が繁殖する温床であり、そのままにしていると口臭の大きな原因になります。
ケアによってニオイの元を除去すれば、口臭の改善や人間関係の良化といったメリットにもつながります。
ちなみに、歯周ポケットのケアによって歯周病の進行を防ぐことで、糖尿病や心臓病、誤嚥性肺炎などの予防効果も得られます。
歯周ポケットを自分で清掃することはできる?
歯周ポケットのケアはもちろんすべきですが、患者さん自身で清掃することはあまりおすすめできません。
なぜなら、以下のようなデメリットがあるからです。
・歯や歯茎を傷つける
・歯周病を悪化させる
・歯石を完全に除去できない
・口内環境の悪化
各デメリットについて詳しく説明します。
歯や歯茎を傷つける
市販のスケーラーなど、歯石を除去するためのアイテムを使用すれば、患者さん自身でも歯周ポケットを清掃することは可能です。
しかし市販のスケーラーは鋭利な場合があり、正しい知識や技術がないと、歯のエナメル質や歯茎を傷つける危険性があります。
また力が強すぎると、出血や知覚過敏を引き起こすことも考えられます。
歯周病を悪化させる
歯周ポケットのケアは歯周病予防に効果的ですが、自力で歯周ポケットを清掃するとかえって歯周病が悪化する可能性があります。
セルフケアでは、歯周ポケットの奥のプラークや歯石を完全に除去できず、歯周病菌が繁殖し続ける可能性があります。
またこちらを放置すると、歯周病が進行して歯を支える骨が溶けてしまうおそれがあります。
歯石を完全に除去できない
先ほども触れた通り、患者さん自身で歯周ポケットを清掃しても、十分に歯石は除去できません。
特に歯石の付着量が多い場合、びくともしない可能性があります。
また中途半端にやわらかい歯石やプラークだけ除去できたとしても、その奥にはまだ汚れが残っています。
そのため、最初から歯科クリニックでケアをしてもらった方が効率は良いです。
口内環境の悪化
自力での歯周ポケットの清掃は、口内環境の悪化にもつながります。
具体的には、不適切なケアは口内環境を悪化させ、口臭を発生させることがあります。
歯周ポケットを無理やり歯ブラシでゴシゴシ磨いたり、スケーラーで強引に汚れをかき出したりすると、歯が傷つきます。
このとき、傷ついた歯は表面がザラザラになり、プラークが付着しやすくなります。
プラークは虫歯や歯周病だけでなく、口臭の原因にもなるため、なるべく付着量を増やさないことが望ましいです。
適切な歯周ポケットのケアについて
適切な歯周ポケットのケアを行いたい方は、歯科クリニックで歯周基本治療を受けるようにしましょう。
こちらは歯科医師や歯科衛生士によるスケーリング、ルートプレーニングを指しています。
スケーリングは、歯茎の上にある歯石や、歯周ポケットの奥深くにある歯石を除去する施術です。
歯科医師はスケーラーの扱いに慣れているため、こちらの治療を受けても歯や歯茎が大きく傷つくことはありません。
またルートプレーニングは、スケーリングの後に行われます。
具体的には、歯周病菌に感染した歯根の表面を滑らかにする施術です。
歯根面をツルツルにすることで、細菌が再付着しにくい環境をつくります。
まとめ
本記事で皆さんに伝えたいことは、歯周病予防において歯周ポケットのケアは必要不可欠であること、そして自力での歯周ポケットの清掃は避けるべきだということです。
特に歯科クリニックに苦手意識がある方は、何とか自力で歯周ポケットを清掃しようと考えがちです。
しかし、歯科クリニックで行う歯周基本治療よりも有効な方法は存在しません。
また歯周基本治療は、患者さんが想像しているよりも痛みが少ない可能性が高いです。
