歯周病は、歯の周囲のプラークに含まれる細菌の毒素により、歯茎が炎症を起こし、次第には歯槽骨を溶かしてしまう病気です。
自覚症状がほとんどないことから、静かなる病気とも呼ばれる歯周病ですが、こちらは喫煙と密接な関係にあります。
今回は、こちらの関係性を中心に解説したいと思います。
喫煙は歯周病を進行させる
タバコに含まれる煙や成分は、口の中に入ると粘膜や歯茎から吸収されます。
吸収された有害物質は、血管を収縮させ、歯茎の血流量を減少させます。
また、血液循環が悪化し、歯茎に十分な酸素が行き届かなくなると、歯周ポケットの中で歯周病の原因となる細菌が増殖しやすくなります。
つまり、喫煙は歯周病の発症や進行に大きく関わっているということです。
禁煙をすると歯周病は治る?
禁煙をすると、数週間程度で歯茎などの組織は、本来の免疫反応を回復させます。
また、その段階から歯周病の治療をすることにより、1年後には歯茎は本来の健康な状態に戻るとされています。
そのため、禁煙だけで歯周病が治るわけではありませんが、治療の効果を出すためには、禁煙が必要不可欠だと言えます。
ちなみに、歯周病の治療を行うことで、歯茎の黒ずんだ色も、時間はかかるものの、少しずつ元のキレイなピンク色に戻ります。
歯周病と禁煙に関するデータについて
非喫煙者における歯周病のリスクを1とすると、禁煙2年以内では3.22、11年以上禁煙すると、1.15までリスクは下がり、非喫煙者とほぼ同じレベルになるというデータがあります。
また、20~49歳で6年以上禁煙すると、喫煙が原因で歯周病になる割合が5%以下であるのに対し、50歳以上では、13年以上の禁煙でも、約10%にまでしか低下しません。
つまり、若いうちに禁煙し、禁煙時間が長くなればなるほど、歯周病治療や予防に効果があるということです。
歯周病を悪化させるタバコの成分について
タバコには、ニコチンという成分が含まれています。
こちらは、免疫力を低下させるため、歯周病の場合、歯茎を治癒する力を弱めてしまいます。
ちなみに、ニコチンは歯にヤニとして蓄積するため、喫煙習慣があることにより、常時ニコチンの毒素に口腔内の組織がさらされてしまうことになります。
また、喫煙することで一酸化炭素が発生しますが、こちらは歯茎の組織に酸素を供給することを阻害します。
その結果、歯茎の血管が細くなり、組織が線維化し、歯周病の状態が悪化しやすい状態になってしまいます。
受動喫煙と歯周病の関係性について
本人には喫煙していなくても、身の回りのタバコの煙を吸わされてしまうことを受動喫煙といいます。
こちらの受動喫煙も、歯周病との関係性が報告されています。
家庭のみで受動喫煙経験のある非喫煙者は、受動喫煙経験のない非喫煙者よりも歯周病のリスクが約3.1倍も高くなっています。
また、家庭および家庭以外の場所で受動喫煙経験のある非喫煙者は、受動喫煙経験のない非喫煙者よりも約3.6倍、重度の歯周病のリスクが高いことがわかっています。
つまり、タバコを吸っている方は、知らず知らずのうちに、周りにいる非喫煙者における歯周病のリスクも上昇させてしまっているということです。
喫煙による歯周病以外の口内への悪影響
喫煙は歯周病を悪化させるだけでなく、口内にさまざまな悪影響を与えます。
タバコのヤニで歯が汚れるだけでなく、メラニンが沈着して歯茎が黒くなり、繊維質のゴツゴツした歯茎になります。
その他、舌の表面の細かい突起部分が舌苔にまみれ、ヤニを沈着させ、ひどい口臭を発したり、味覚を感じる器官をヤニまみれの舌苔が覆い、味覚を鈍くさせたりすることもあります。
また、味を感じにくくなると、自然と味付けの濃いものに食事が偏り、こちらが高血圧等の生活習慣病の原因にもなり得ます。
口内にできるガンのリスクを大いに高めるのも喫煙です。
禁煙をする際のポイントについて
歯周病悪化のリスクを軽減させるために、禁煙をしようと考えている方は、まず何のために禁煙するのか、明確で強い意志を持つことが大切です。
そのためには、歯周病と喫煙の関連性について、詳しく理解しておかなければいけません。
また、周囲の環境を整え、協力できる仲間づくりをしたり、吸いたい気持ちを発散させる方法を考えたりといったことも重要です。
ちなみに、専門家によるカウンセリングやニコチン代替療法など、禁煙支援を受けることもおすすめです。
禁煙支援には、禁煙開始支援、禁煙継続支援の2種類があり、ニコチン代替療法としてニコチンガム、ニコチンパッチを正しく利用することで、禁煙ができる可能性はグッと高まります。
まとめ
ここまで、歯周病と喫煙の関係性を中心に解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
喫煙が原因で歯周病を進行させてしまっている方は非常に多く、気付いたときには手遅れになるケースも珍しくありません。
ただし、禁煙することで口内の状態はある程度改善するため、定期的に歯科クリニックに通い、歯周病を早期発見した上で、少しずつ禁煙できるように努力することが大切です。