子どもの歯並びや噛み合わせの状態が良くないことを、総称して不正咬合といいます。
また、その中の一つに“下顎前突”というものがあり、こちらは歯科クリニックで矯正治療を受けなければ、さまざまなデメリットが生まれます。
今回は、下顎前突の概要と主なデメリットについて解説します。
下顎前突の概要
下顎前突(かがくぜんとつ)とは、上下の噛み合わせで下の前歯が前に出てしまう状態のことをいいます。
反対咬合や受け口とも呼ばれます。
こちらは、審美面での治療が多く見られますが、下顎前突によって日常生活に支障をきたす場合もあるため、早期治療をおすすめしています。
また、下顎前突の主な原因は、指しゃぶりなどの癖による歯並びやバランスの乱れ、骨格の遺伝などが挙げられます。
子どもの下顎前突における主なデメリット
子どもの下顎前突には、主に以下のようなデメリットがあります。
・咀嚼がしにくくなる
・下顎がどんどん成長する
・発音に影響が出る
・虫歯のリスクが高くなる
・全身のバランスに影響する
・消化器官に負担がかかる
・見た目で悩む
咀嚼がしにくくなる
子どもの下顎前突を放置していると、噛み合わせに影響を及ぼします。
こちらは、正しく咀嚼できないだけでなく、しっかりと噛めないことによって唾液の分泌量が低下してしまい、満腹感を感じにくくなることにもつながります。
その結果、食べすぎや消化不良などを引き起こすこともあります。
また、特定の歯に偏って咀嚼することにより、その歯ばかりに強い力がかかり、歯が折れたり、割れたりといったトラブルにもつながります。
下顎がどんどん成長する
下顎の骨は、思春期くらいに体の成長発育に伴い、急成長するという特徴を持っています。
そのため、早い段階で骨格性の下顎前突を治療しておかないと、骨が成長しすぎてしまい、矯正治療だけでは治せなくなり、成長しすぎた下あごを外科的に切除する手術が必要になることがあります。
発音に影響が出る
発音の良し悪しは、唇、舌、前歯の状態に大きく左右されます。
下顎前突では、前歯の噛み合わせが通常と逆であることから、言葉の発音が悪くなりがちです。
特に、噛み合わせに隙間ができてしまうことが原因で、歯と舌先が触れるサ行やタ行の発音が難しくなります。
虫歯のリスクが高くなる
下顎前突の子どもは、唇が閉じにくいため口が乾燥します。
そうすると、唾液の分泌が減り、抗菌作用や自浄作用などの効果が得られません。
その結果、口内の環境が悪くなり、虫歯になりやすい傾向があります。
また、同じく細菌が原因で発症する歯周病のリスクも高くなり、これらの症状に伴って口臭も発生しやすくなります。
全身のバランスに影響する
下顎は、首や肩、腰など身体の軸となる骨と深い関係性があると言われていて、全身のバランス維持に欠かせないものです。
下顎前突だと、会話や食事のときに顎関節に負担がかかってしまい、顎の痛みが出るだけでなく、関節痛や肩こり、腰痛などさまざまなトラブルを引き起こします。
消化器官に負担がかかる
下顎前突の場合、前歯同士の接触が良くないことから、うまく食べ物を噛み切れないことがあります。
また、咀嚼が不十分だと、食べ物が大きい状態のまま体内に入ってしまうため、胃や腸などの消化器官に負担がかかり、消化不良や体調不良を起こしやすくなります。
見た目で悩む
下顎前突の子どもの多くは、口元の審美性を気にかけています。
下顎前突の場合、下顎が前に出がちであるため、初対面の相手などには不機嫌な印象を与えがちだと言われます。
また、体格の良いスポーツ選手にも下顎前突の傾向にある方がいるため、もちろん頼もしいイメージもありますが、顎のトラブル原因になりやすい点は注意が必要です。
特に、子どもは多感な時期を過ごすため、大人よりも見た目を気にしやすく、周りの友達などから見た目をからかわれるリスクもあります。
下顎前突の矯正治療は何歳までに行うべき?
子どもの下顎前突は、骨格性が原因で起こってしまうケースが多いため、早期に治療することが重要です。
具体的には、5歳頃までに治療を開始するのが理想であり、家族に下顎前突の方がいる場合などは、実際に症状が出てからではなく、早めに歯科クリニックに相談することをおすすめします。
ちなみに、下顎前突の治療では、急速拡大装置という顎の骨を広げる固定式の矯正器具や、拡大床という成長期の顎に装着し、歯が生えるスペースをつくる取り外し式の矯正器具を使用します。
場合によっては、これら2つの装置を併用することもあります。
まとめ
ここまで、子どもの下顎前突における概要と主なデメリットを中心に解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
下顎前突は、口内トラブルだけでなく、身体のさまざま部位や臓器などにも悪影響を与える可能性があります。
また、見た目の印象が良くなくなることは、子どもにとって致命的なデメリットとも言えるため、下顎の成長が活発になる前に、矯正治療によって改善することをおすすめします。