自身の歯に問題がある親御さんの中には、「子どもに遺伝してしまわないか」という不安を抱えている方もいるかと思います。
実際、歯の特徴や症状には、遺伝性があるものも存在するため、こちらは取り越し苦労ではない可能性があります。
今回は、どのようなものに遺伝性があるのかを中心に解説したいと思います。
遺伝性のある歯の特徴5選
以下のような歯の特徴については、親御さんから子どもに遺伝する可能性があります。
・歯の数
・歯の大きさ
・歯の強さ
・歯の色
・顎の骨
歯の数
親御さんの歯の数については、その子どもに遺伝することがあります。
永久歯の基本的な本数は28本(親知らずがある場合は32本)ですが、中には本来生えてくるべき永久歯が生えてこない先天性欠損歯がある方や、生まれつき歯の本数が多い過剰歯がある方もいます。
また、歯の本数については、骨格形成によって決定されるため、遺伝的な要素が強いとされています。
歯の大きさ
親御さんの歯の大きさも、遺伝性のある特徴だと言えます。
例えば、父親もしくは母親が大きな前歯をしていると、遺伝によってその子どもも前歯が大きくなるケースが多いです。
また、前歯が大きいことにより、他の歯のサイズが小さくなる、歯並びが悪くなるといった特徴も受け継ぐことが考えられます。
歯の強さ
歯の強さについても、親御さんから子どもへの遺伝性があります。
歯の強さは、多面的な要素で決定される複雑なものです。
具体的には、歯の質と構造、遺伝性疾患、口腔内細菌の組成によって決定します。
歯の質や構造については、エナメル質の厚さや質感などが遺伝するケースがあり、アメロジェネシス不完全などの遺伝性疾患は、エナメル質や象牙質の形成不全を引き起こし、歯の強さや耐久性に影響を及ぼしますが、こちらも名前の通り、遺伝の可能性がある疾患です。
また、虫歯や歯周病のリスクに関連する口腔内の細菌組成に関しても、部分的に遺伝的要因によって左右される可能性があります。
歯の色
歯の色も、親御さんから子どもへの遺伝が見られます。
歯の色は、象牙質というエナメル質の下の組織によって決定します。
こちらの組織が遺伝の影響を受けやすいことから、必然的に歯の色も遺伝しやすいとされています。
また、歯はカルシウムとリン酸と呼ばれる成分からできていて、こちらの成分が胎児のときに不足してしまうと、エナメル質が十分に形成されなくなり、子どもは生まれつき黄色い歯になってしまうことがあります。
顎の骨
こちらは、正確に言うと歯の特徴ではありませんが、顎の骨に関しても、親御さんから子どもに遺伝するケースがあります。
特に遺伝の影響が大きく見られるのは、顎の骨の特徴的な形や大きさです。
親御さんの上顎や下顎が小さいと、子どもの顎の大きさも小さくなる傾向が見られます。
また、顎が小さいことにより、永久歯の生えるスペースが足りなくなり、叢生や八重歯といった悪い歯並びになってしまうことが考えられます。
虫歯は遺伝するのか?
代表的な歯の症状として挙げられるのが虫歯ですが、結論からいうと、虫歯が親御さんから子どもに直接遺伝することはありません。
虫歯の原因は、歯質、細菌、食事、時間という4つの要素が絡み合ったものです。
細菌は生後に感染するものですし、食事や時間も生活習慣に由来する要素であるため、直接的な虫歯の遺伝は考えられません。
また、前述したように歯質、つまり歯の強さについては、親御さんからの遺伝子が反映される部分ですが、エナメル質の石灰化の度合いなどは、出生後の環境で大きく変化します。
そのため、虫歯という病気を遺伝と関連付けることは難しいです。
ただし、親御さんの歯並びが悪く、ブラッシングがしにくいことで、何度も虫歯を再発しているという場合は、子どもも同じような歯並びになり、虫歯になりやすい口内環境になってしまう可能性があります。
ちなみに、子どもの虫歯における初期感染は、母子間で起こることが多いです。
具体的には、母親が虫歯菌に感染している場合に、子どもとタオルや食器を共有したり、口移しで食べ物を与えたりすることで、虫歯菌に感染させてしまいます。
歯周病は遺伝するのか?
虫歯と同じく、口内トラブルとして多くの方を悩ませるのが歯周病ですが、こちらは虫歯とは違い、遺伝性が強いとされています。
世の中には、歯をよく磨くにもかかわらず、歯周病になる方もいれば、まったく歯のケアに意識がないものの、歯周病が進行しない方もいます。
これらは遺伝的要素から来ているものであり、歯周病の進行には、遺伝的要素が多分に含まれていて、日本人のおよそ30%は、歯周病を進行させやすい遺伝子を持っていると言われています。
まとめ
ここまで、歯の特徴や症状における遺伝性について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
親御さんの歯に問題があれば、必ずその子どもに遺伝するというわけではありません。
しかし、遺伝するケースは決して少なくありませんし、本来遺伝性のない虫歯などの症状についても、間接的に子どもの歯で見られる可能性は高くなるため、親御さんはできる限り早めに、自身の歯の問題を解決することをおすすめします。