ハイブリッド矯正を行う際には、ワイヤー矯正で歯の移動が難しいところの治療を行います。
またその他の箇所はマウスピース矯正で対処しますが、このとき矯正用インプラントが使用されるケースもあります。
今回は、ハイブリッド矯正で使用される矯正用インプラントの概要やメリット・デメリットを解説します。
矯正用インプラントの概要
矯正用インプラントは、アンカースクリューとも呼ばれるネジのことをいいます。
こちらを使用した矯正治療は、スピード矯正とも呼ばれます。
一般的なインプラントは、歯周病や虫歯によって失ってしまった歯をカバーするために、顎の骨に入れる人工歯根です。
その上に上部構造という人工歯を被せ、天然歯に近い歯をつくり上げます。
一方、矯正用インプラントは、人工歯根として使用するインプラントの1/2~1/3程度の大きさです。
ネジを顎骨に埋め込み、ネジを支点に力をかけて歯を移動させます。
ハイブリッド矯正においては、マウスピース矯正と同じく、ワイヤー矯正では対応が難しい部分の移動・調整などに用いられます。
矯正用インプラントのメリット
ハイブリッド矯正で使用する矯正用インプラントには、以下のようなメリットがあります。
・治療期間を短縮できる
・歯を後方へ大きく移動させられる
・動かしたい歯だけに直接アプローチできる
・難しい症例にも対応できる
各メリットについて詳しく説明します。
治療期間を短縮できる
矯正用インプラントを使用すれば、ただでさえ短いハイブリッド矯正の期間がより短くなることが予想されます。
矯正用インプラントを顎骨に埋め込み、それを固定源とすれば、数本の歯をまとめて大きく動かすことができます。
ワイヤー矯正も大きく歯を動かすのが得意ですが、矯正用インプラントはワイヤー矯正が適用できない場合も、しっかり歯を移動させることが可能です。
そのため、目標の歯並びになるまでの期間を短縮しやすいです。
歯を後方へ大きく移動させられる
矯正用インプラントには、歯を後方へ大きく移動させられるというメリットもあります。
これまで前歯を大きく後方に移動させるには、在宅時や就寝時にヘッドギアを装着する必要がありました。
しかし矯正用インプラントを用いた治療であれば、インプラントが強固な固定源となって歯を動かすため、ヘッドギアは必要ありません。
動かしたい歯だけに直接アプローチできる
矯正用インプラントは、動かしたい歯だけに直接アプローチすることができます。
ワイヤー矯正など従来の矯正治療では、奥歯と前歯がお互いに力を加え合うことで歯を移動させていました。
一方矯正用インプラントは、アンカースクリューを固定源とすることで、動かしたい歯だけに効率良く力を加えることが可能です。
そのため、動かしたくない歯に余計な負担をかけることがありません。
難しい症例にも対応できる
矯正用インプラントは、ハイブリッド矯正において難しい症例に対応する際に用いられるものです。
例えば歯を自由に動かしたり、1本だけ動かしたりといったことは、ワイヤー矯正ではなかなか実現できません。
そのため他院では治療が難しいと言われた症例や、歯茎の見える部分が多いガミースマイルのような症例でも対処できる可能性があります。
矯正用インプラントのデメリット
矯正用インプラントには以下のようなデメリットもあるため、注意してください。
・麻酔や手術が必要になる
・治療中に抜けることがある
・感染症のリスクがある
各デメリットについて詳しく説明します。
麻酔や手術が必要になる
矯正用インプラントは、歯茎に小さな穴を開けて埋入するため、麻酔や外科手術を伴います。
ただし開ける穴は1mm程度の小さなものであり、治療後に痛みや腫れが出ることはほとんどありません。
少しでも痛みを避けたいという方は、麻酔が切れる前に痛み止めを服用しましょう。
治療中に抜けることがある
矯正用インプラントは、治療中に抜けてしまうリスクがあります。
通常のインプラントは歯の根として使用するため、顎の骨にしっかりと結合させ、長期間使用していく前提です。
一方矯正用インプラントは、治療後スムーズに取れるように、骨にくっつかないようにしてあります。
そのため、矯正期間中自然に抜けることが考えられます。
感染症のリスクがある
矯正用インプラントは、前述の通り外科手術を行います。
そのため、口内にはわずかながら傷跡が残ります。
またネジ周囲はブラッシングがしにくく、これによって口内の細菌が増え、患部から感染症を引き起こしてしまう可能性があります。
まとめ
矯正用インプラントは、ワイヤー矯正でもマウスピース矯正でも難しい歯の移動などを行う際、非常に役に立つものです。
すべての歯科クリニックで採用されているわけではありませんが、矯正用インプラントを使用すれば、ハイブリッド矯正はよりスピーディーに完了させられます。
ただし麻酔や手術を伴う矯正方法であるため、これらが苦手な方にはあまり向いていないと言えます。