過去に虫歯になったことがある親御さんは、自身の子どもには同じような思いをさせまいと、日々工夫を凝らしていることかと思います。
では、親御さんに虫歯がある場合、その子どもも同じように虫歯になることはあるのでしょうか?
今回は、虫歯の遺伝性に関することを中心に解説します。
虫歯が遺伝することはある?
結論から言うと、虫歯という疾患そのものが遺伝することはありません。
そのため、親御さんが虫歯であっても、その子どもは虫歯とは無縁の人生を送れる可能性もあります。
しかし、親御さんの歯並びや骨格が遺伝することにより、子どもの虫歯リスクが高くなることは十分に考えられます。
虫歯の発症には、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。
例えば歯の質や歯並び、骨格や唾液の質、口内に潜む菌の割合などが挙げられますが、このうち遺伝しやすいのは歯並びと骨格です。
特に歯並び関しては、全体の50~80%程度は遺伝すると言われています。
また歯並びの遺伝が虫歯につながる理由としては、歯並びが良くないとブラッシングが十分にできなくなることが挙げられます。
磨き残しが多くなると、その分プラークや歯石は形成されやすく、虫歯だけでなく歯周病のリスクも高くなってしまいます。
歯質や唾液の質が遺伝した場合の虫歯リスク
先ほど歯並びや骨格は遺伝しやすく、虫歯リスクを高める要因になるという話をしましたが、こちらは歯質や唾液の質が遺伝した場合も同様です。
歯質とは、簡単にいうと歯の強さのことを意味しています。
歯の構造そのものは人間誰しも同じですが、エナメル質の石灰化度や厚さなどについては、遺伝によって決定される部分もあります。
そのため見た目は問題なかったとしても、虫歯になりやすかったり進行が速かったりする場合は、歯質に問題があることが考えられます。
また唾液腺の機能に障害が出る遺伝子が継承された場合、子どもの唾液の分泌量も少なくなります。
唾液には口内を殺菌する作用や、汚れを洗い流す自浄作用などがあるため、虫歯を予防するにあたって欠かせない物質です。
つまり唾液の分泌量が少なくなれば、菌の活動を抑制したり、汚れを洗い流したりすることができず、虫歯になりやすくなるということです。
親御さんから子どもに虫歯菌がうつるリスクも
遺伝とは少し異なりますが、親御さんから子どもに虫歯菌がうつるリスクもあります。
こちらは親子間で生じる唾液感染のことを指しています。
虫歯は虫歯菌に感染することで発症します。
簡単に言えば、ウイルスに感染して風邪を引いてしまうのと同じです。
つまり虫歯菌が口内に存在しなければ、どれだけ悪い歯並びであろうが、虫歯を発症することはないということです。
しかし、虫歯の初期感染は親子間で起こるケースがとても多いです。
例えば親子で食器を共有したり、キスなどのスキンシップを取ったりすると、唾液が親御さんから子どもの口内に移動します。
子どもの口内には、元々一切虫歯菌が存在しません。
それにもかかわらず、上記のような行動を取ってしまうと、親御さんの唾液が原因で子どもの虫歯リスクは高まってしまいます。
もちろん虫歯菌が移動するだけであるため、必ずしもそれで子どもが虫歯を発症するとは限りません。
それでも、一切虫歯菌がなかった子どもの口内について、虫歯を発症しやすい状態にしてしまうことは確かです。
親御さんの生活習慣を真似て虫歯になることも
子どもは親御さんの姿を見て育ちます。
そのため、親御さんが虫歯のリスクを高めるような生活習慣である場合も、子どもは虫歯になりやすくなります。
例えばブラッシングを丁寧に行わなかったり、ダラダラと食事をしたり、甘いものをたくさん摂取したりといった生活習慣です。
子どもはこのような生活習慣を見たとき、「これで良いのか」と思い、同じような生活を送ってしまうことがあります。
逆に親御さんがしっかりセルフケアを行い、虫歯になりにくい食事方法を心掛けていれば、子どもの歯は健全に育つことが予想されます。
少しでも子どもの虫歯リスクを減らすために
歯並びなどの遺伝により、子どもの虫歯リスクが高くなったとしても、親御さんがしっかりサポートすればそのリスクは軽減させることができます。
例えば毎食後のブラッシングはもちろん、糖分摂取の頻度をなるべく少なくしたり、フッ素入りの歯磨き粉を使用したりといったことは重要です。
またセルフケアだけでなく、定期的に歯科クリニックのメンテナンスにも通わせ、虫歯の早期発見を目指します。
まだ初期段階の虫歯であれば、歯を削る治療は必要ないため、子どもでもスムーズに治療が受けられます。
まとめ
虫歯になりやすいという自覚がある方、現在虫歯を患っている方は、子どもへの遺伝について思うところがあるでしょう。
実際、遺伝的な要因で虫歯のリスクが高まることはありますが、決して諦める必要はありません。
先天的な要因だけでなく後天的な要因でも虫歯のリスクは高まるため、後天的な部分をしっかりケアしていれば、子どもの歯の健康は保たれます。