入れ歯を装着することにより、以前よりも食事がしやすくなったり、発音が良くなったりします。
これらのメリットが問題なく享受できる場合、入れ歯は問題ないかと思いますが、しばらく使用していると使用感の悪さを感じることがあります。
今回は、入れ歯の使用感が悪くなる主な原因について解説します。
使用感が悪くなった場合の主な症状
入れ歯の使用感が以前より悪くなると、以下のような症状が出始めます。
・痛みや違和感が出る
・入れ歯が外れる
・食べ物を咀嚼しにくい
・発音しにくい
食事中や会話中、急に痛みが生じるような場合は、入れ歯が合っておらず使用感も悪くなります。
また入れ歯は本来口内にしっかり固定されるものですが、劣化が見られるとずれたり外れたりするリスクも高まります。
さらに、本来得られるはずの食事や発音におけるメリットが、デメリットとして現れることもあります。
例えば噛み合わせが悪くなって食べられるものに制限が出たり、発音が悪くなってコミュニケーションが取りづらくなったりといったデメリットです。
入れ歯の使用感が悪くなる原因5選
入れ歯の使用感が悪い、自身の口に合わないと感じる主な原因は以下の通りです。
・顎の退縮、変形
・入れ歯の摩耗
・支台歯のダメージ
・お湯などによる変形
・入れ歯の汚れ
各項目について詳しく説明します。
顎の退縮、変形
顎の退縮や変形により、入れ歯が合わなくなって使用感に影響が出ることがあります。
顎の退縮や変形は、骨吸収によって起こります。
また顎の骨の吸収にはさまざまな原因がありますが、主な原因としては歯周病、骨粗しょう症などがあります。
歯周病によって歯茎が痩せたり、歯を失ったりすると、歯と歯の間に隙間ができます。
これにより、食べ物が隙間に強く押し込まれることを食片圧入といいます。
さらに歯周病が進行すると、歯槽骨が破壊されていき、これらの要因がいくつか重なると、顎の骨が吸収されて入れ歯が合わなくなります。
入れ歯の摩耗
入れ歯の使用感の悪化は、入れ歯自体の摩耗によっても起こります。
あまり入れ歯をしている方に自覚はないかもしれませんが、食べ物を咀嚼するたびに入れ歯は少しずつ擦り減っています。
もちろん短期間では気付かないレベルですが、長期間入れ歯を使用し続けている場合、大きく擦り減ってしまうこともあります。
また摩耗が大きくなればなるほど、噛み合わせも合わなくなってくるため、使用感の悪化につながります。
ちなみに入れ歯は毎日メンテナンスを行わなければいけませんが、入れ歯をブラッシングする際の力が強すぎると、歯や床の部分が擦り減るのが早くなります。
特に入れ歯用ブラシではなく、通常の歯ブラシを使用している場合などは要注意です。
支台歯のダメージ
部分入れ歯の場合、支台歯のダメージが蓄積することにより、入れ歯の使用感が悪化するケースがあります。
支台歯とは、部分入れ歯の留め具をかける歯のことを言います。
こちらの歯があることにより、部分入れ歯の安定感や噛み心地、発音のしやすさなどが保たれています。
しかし、咀嚼時に歯を失った部分の歯茎と、歯茎の残っている支台歯にかかる噛む力のバランスが崩れると、残存している支台歯のみにダメージがかかることがあります。
そうなると支台歯はグラグラと動揺し始め、最終的には部分入れ歯を支えられなくなってしまうことが考えられます。
お湯などによる変形
入れ歯の洗浄にお湯を使用したことにより、変形が見られた場合も、使用感は悪くなります。
入れ歯のメンテナンスは、専用のブラシや洗浄剤を使用して行います。
また流水で汚れを洗い流す場合、水もしくはぬるま湯を使用しなければいけません。
しかし、中には高い殺菌効果を求めて、お湯で入れ歯を洗浄してしまう方もいます。
入れ歯の素材にもよりますが、お湯を使用すると熱や乾燥などの影響で形状が変わってしまうことがあります。
患者さんの口内に合わせて緻密につくられている入れ歯は、少しでも変形すると合わなくなり、これまでの機能性を失ってしまいます。
入れ歯の汚れ
入れ歯のメンテナンスが不十分であり、汚れが蓄積した場合も、使用感は悪化する可能性が高いです。
なぜなら床部分の形が変わってしまうことがあるからです。
入れ歯を装着した状態で食事をすると、当然天然歯と同じように食べカスやプラークが付着します。
こちらをしっかり除去しなければ、細菌が入れ歯の床の素材に侵入して変形させたり、唾液に含まれるカルシウムが付着して歯石になったりするおそれがあります。
もちろん、変形が見られる入れ歯は密着感が弱まり、合わないと感じやすくなります。
まとめ
入れ歯がなければ、十分に食事が楽しめなかったり、会話によるコミュニケーションが取りにくかったりする方は少なくありません。
しかし明らかに使用感が悪くなっている場合、そのまま調整や交換もせずに使用し続けるのは危険です。
痛みなどの症状が出ている場合、入れ歯ではなく、患者さんの歯や骨などに重大な問題が生じている可能性もあります。
