歯を失ったときにその部分を補い、天然歯同様の使用感を得られるのがインプラントのメリットです。
しかし、患者さんの状態によっては、治療後の生活に影響が出ることも考えられます。
また特に懸念されるのが、歯ぎしりによる影響です。
今回は、インプラントと歯ぎしりの関係性を中心に解説します。
歯ぎしりがあってもインプラントはできる?
歯ぎしりの症状が見られる方でも、インプラントを適用させることは可能です。
実は日本人のおよそ7割は、無意識のうちに歯ぎしりを行っているとされています。
そのため、歯ぎしりがない方がインプラントにするケースの方が珍しいと言っても過言ではありません。
しかし、歯ぎしりはインプラントと非常に相性が悪い習慣です。
一切対策を取らないまま治療してしまうと、インプラントの埋入後にさまざまなトラブルが起こる可能性があります。
歯ぎしりがインプラントに与える悪影響
歯ぎしりをすることにより、インプラントに対し以下のような悪影響を及ぼすことが考えられます。
・インプラントの破損
・インプラント周囲炎
歯ぎしりは、普段人が噛む力の何倍もの負荷が歯にかかります。
そのため、治療後でも症状が出ている場合、インプラントの上部構造や人工歯根が破損してしまう可能性があります。
もちろんインプラントが壊れてしまうと、本来の機能性は発揮できないため、再び治療を受けなければいけません。
また歯ぎしりは、インプラント周囲炎のリスクも高めます。
仕組みとしては、歯を強く擦り合わせることで歯茎が下がり、歯周病の原因となる細菌が歯茎に侵入します。
さらに歯ぎしりで歯周組織が損傷すると、炎症を起こしインプラント周囲炎を発症しやすくなります。
ちなみにインプラント周囲炎は進行が速く、こちらも最悪の場合インプラントを抜歯し、再治療を受けなければいけないことがあります。
インプラントが歯ぎしりの影響を受けやすい理由
天然歯に比べて、インプラントは歯ぎしりの影響を受けやすいとされています。
なぜなら、歯根膜という歯根と歯を支える薄い膜が存在しないからです。
歯根膜の主な役割は、顎の骨にかかる噛むときの負担を軽減することです。
歯根膜があることにより、咀嚼時の力が分散されるため、それほど大きな負担はかかりません。
一方、インプラントは人工歯根を埋め込みますが、こちらは天然歯とは構造が異なります。
歯や歯根の機能は回復するものの、歯根膜は存在しないため、咀嚼の際の負担がダイレクトに顎骨に伝わり、歯へのダメージも大きくなります。
歯ぎしりがあるかどうかを判断する方法
就寝中、無意識に歯ぎしりを行っているという方は多いです。
また家族に指摘されれば、自覚症状がなくても気づくことができますが、一人暮らしの方などはなかなか症状が出ているかどうか判断しにくいです。
そのような方は、以下の項目にどれくらい該当するかで、歯ぎしりがあるかどうかを判断しましょう。
・知覚過敏の症状がある
・詰め物や被せ物が取れやすい
・口が開きづらい、開かない
・顎やフェイスラインが痛い
・噛み合わせが悪化していきている
・頭痛や肩こりがひどい
・内側の頬や舌に歯の跡がある
・歯の歯根が欠けている
・歯周病が進行している など
これらに該当している数が多ければ多いほど、歯ぎしりの疑いは強くなります。
歯ぎしりからインプラントを守るための対策
歯ぎしりの症状がある方は、インプラント治療後のトラブルをなるべく回避するために、以下のような対策を取りましょう。
・ナイトガード
・認知行動療法
・矯正治療
各項目について詳しく説明します。
ナイトガード
ナイトガードは、就寝中の歯ぎしりによる歯へのダメージを守るマウスピースです。
インプラントは治療が終わった後も、しばらく骨に定着させるための期間が必要になります。
主にこちらの期間、ナイトガードを装着し続けることにより、定着がうまくいかなくなることを防げます。
認知行動療法
認知行動療法は、歯と歯が触れないように意識することで、歯ぎしりの習慣を減少させる治療法です。
こちらは、特に日中の歯ぎしりを予防するためのものです。
例えば、時間を決めてリラックスする時間をつくり緊張をほぐすことや、目の付くところに“歯を離す”と書いた紙を貼ることなどが該当します。
矯正治療
生まれつきの噛み合わせや歯並びにより、歯や顎に歯ぎしりのダメージがかかりやすい方は、矯正治療を受けることも検討しましょう。
ただし、矯正治療を受けてからインプラント治療を受けるとなると、かなりの時間を要することが予想されます。
まとめ
インプラント治療を受けようと考えている方は、一度自身が治療を受けるのに適しているかを確認しなければいけません。
歯ぎしりがある場合、インプラントが破損したりインプラント周囲炎になったりするリスクが高まり、一から治療をやり直さなければいけないこともあります。
また歯ぎしりだけであれば治療自体は受けることが可能ですが、免疫不全や白血病などの禁忌症も存在するため、注意が必要です。