インプラント治療は安全を考慮して慎重に行われるものですが、残念ながら必ずしも成功するとは限りません。
治療後にさまざまな問題が発生し、使用するのが困難になることもあります。
では、インプラントがダメになった場合の代わりとしては、入れ歯以外に選択肢はないのでしょうか?
今回はこちらの点を中心に解説します。
インプラントの寿命はどれくらい?
インプラントの寿命は、一般的に10~15年程度とされています。
こちらは同じく歯を失ったときの治療法である入れ歯の約5年、ブリッジの約8年よりも長いです。
また治療後10年以上残存している割合は、累計で9割を超えています。
つまり、ほとんどの方が治療から10年以上はインプラントを使用し続けているということです。
ちなみに治療から20年後の残存率も、7割を超えていると言われています。
余談ですが、1965年に世界で初めてチタン製のインプラントを埋入した患者さんは、治療から亡くなるまでの40年間、問題なくインプラントを使用していたそうです。
インプラントがダメになる理由とは?
先ほどインプラントの寿命は10~15年程度という話をしましたが、稀にこちらの期間よりも短い期間でダメになることがあります。
ここでいう“ダメになる”とは、人工歯根が顎の骨にしっかり固定されなくなって動揺したり、脱落したりすることを指しています。
またインプラントがこういった状態になる原因は、口内環境が悪化することです。
例えば治療後のブラッシングをおろそかにすると、人工歯根を支える歯茎や顎の骨が弱体化し、寿命は短くなります。
また治療後のブラッシングや定期検診が不十分で、食べカスやプラークが蓄積した状態が続くと、インプラント周囲炎のリスクも大幅に高まります。
インプラント周囲炎は、歯周病と同じく発症や進行の自覚症状が乏しく、気付いたときにはインプラントが脱落する直前になっていることもあります。
ちなみに、口内環境は喫煙習慣によっても悪化します。
タバコにはニコチンなどの有害物質が含まれているため、歯茎の炎症を引き起こしたり、人工歯根が抜けやすくなったりする原因になります。
周囲の歯が原因でインプラントがダメになることも
きちんとブラッシングを行い、歯科クリニックのメンテナンスを受けていたとしても、インプラントを使用し続けるのが困難になる場合があります。
例えば、インプラント以外の歯に問題がある場合は、一般的な寿命に満たない期間でダメになることが考えられます。
インプラントと噛み合う天然歯の形状や大きさなどに問題があると、咬合時に過剰な圧力がかかります。
このようなケースでは、通常よりも早い速度で劣化する可能性が高いです。
もちろん、咬合によってインプラントが劣化すれば、より全体の噛み合わせは悪くなります。
インプラントの代わりは入れ歯しかないのか?
確かに、入れ歯はインプラントがダメになってしまった場合の選択肢の一つとして挙げられます。
しかし入れ歯しか代用できる治療がないのかというと、決してそういうわけではありません。
患者さんの口内状況によっては、もう一度インプラント治療を行うことも可能です。
具体的には、顎の骨が十分に回復している場合、骨移植を行うことで再度人工歯根を埋入できることが考えられます。
ただし、インプラント治療は自由診療であり、外科手術も伴います。
そのため、金銭面や体力面で不安がある方は、入れ歯を選択する方が無難だと言えます。
入れ歯であれば保険診療で作製できる可能性がありますし、口内を切開するなどの外科手術も行いません。
インプラントの代わりとして受けられるその他の治療
入れ歯以外でいうと、ブリッジもインプラントの代わりとして受けられる治療の一つです。
ブリッジは、失われた歯の両隣の歯に被せるように義歯を装着する治療法です。
3本の歯がつながったような形状になっていて、両隣の2本を被せ物にし、中央の義歯を支えます。
ブリッジのメリットは、インプラントと同じく目立ちにくいという点です。
銀歯の金具のように、見える位置に金属を使用することはありません。
ただし、両隣の支えとなる歯については、たとえ健康な天然歯であってもある程度削らなければいけません。
インプラントは他の歯に依存しない治療法であるため、こちらはデメリットだと言えます。
またブリッジは人工歯根と比べて、咀嚼のしやすさや耐久性にも難があります。
見た目の美しさについても、インプラントの上部構造には劣るため、機能性や審美性の高い治療法を望む方はインプラントを選択すべきです。
まとめ
インプラントで問題や不具合が発生し、使用を継続できなくなった方は、まず歯科クリニックに相談してください。
患者さんの口内状況や予算、要望などにより、代わりとなる治療は変わってきます。
またインプラントの代わりに別のインプラントを適用できる可能性もあるため、別の治療法を探すことばかり考える必要はありません。
いずれにせよ、まずは現時点の問題を解決することが最優先です。