クラウンの中には、オールセラミックなど自由診療のものも数多くあります。
一方で、特に希望がない方は虫歯治療後、保険診療のものを使用することも多いです。
そんな保険診療のクラウンの代表的なものに、金銀パラジウム合金が挙げられます。
今回は、金銀パラジウム合金の概要やメリット・デメリットについて解説します。
金銀パラジウム合金の概要
金銀パラジウム合金とは、いわゆる銀歯のことを指しています。
クラウンとして被せたり、インレーとして詰めたりするもので、金パラとも呼ばれます。
1961年、国民皆保険が導入された際に安価であったため使用されました。
また、こちらの金属に含まれる成分は金、パラジウム、銀、銅などで構成されます。
ちなみに、こちらの材料は世界中でも日本でしか採用されていません。
金銀パラジウム合金のメリット
金銀パラジウム合金には、主に以下のようなメリットがあります。
・費用が安い
・強度が高い
・噛みやすい
費用が安い
金銀パラジウム合金は保険適用であるため、費用がとても安いです。
こちらは、金銀パラジウム合金を選ぶ最大のメリットだと言えます。
保険が適用されることから、費用は自由診療のものに比べてはるかに安いです。
自由診療のクラウンであるセラミックとの費用相場の違いは以下の通りです。
・金銀パラジウム合金:4,000~6,000円
・セラミッククラウン:80,000~200,000円
このことから、虫歯治療後の費用を極力抑えたいという方にはおすすめです。
強度が高い
金銀パラジウム合金はとても強度の高い素材です。
そのため、セラミックのように強い力がかかったときに割れることがありません。
ただし、金銀パラジウム合金は天然歯と比べてかなり硬いです。
このことから、噛んだときに支台歯(修復物を取り付けた歯)が割れるリスクがあります。
噛みやすい
金銀パラジウム合金は、自由診療のクラウンより機能性が低いイメージがあります。
しかし、実際はそうとは断言できません。
噛むという動作については、金銀パラジウム合金でも同じくらいの機能性があります。
奥歯の大きい虫歯や歯冠が崩壊したような虫歯は、修復する範囲が広くなります。
このような場合、コンポレットレジン修復よりも金銀パラジウム合金がおすすめです。
金銀パラジウム合金の方が硬く割れにくいため、スムーズに修復できます。
金銀パラジウム合金のデメリット
金銀パラジウム合金には、以下のようなデメリットもあります。
・見た目が目立ちやすい
・経年劣化しやすい
・金属アレルギーのリスクがある
・二次虫歯が起こりやすい
・メタルタトゥーのリスクがある
見た目が目立ちやすい
金銀パラジウム合金は金属色であることから、見た目がとても目立ちやすいです。
また、使用するのが奥歯であっても、口を大きく開けた際には目立ってしまいます。
経年劣化しやすい
金銀パラジウム合金は、経年劣化が見られやすい点もデメリットです。
金属素材のため、食事の際などの温度の影響で腐食することがあります。
また、長期間使用すると接着剤が流れてしまい、離脱を引き起こすことも考えられます。
金属アレルギーのリスクがある
金銀パラジウム合金は金属素材であることから、金属アレルギーのリスクがあります。
金属アレルギーと聞くと、ネックレスやピアスなどが原因と思われる方も多いでしょう。
しかし、実際は口内でも起こることがあります。
金属アレルギーはすぐ発症するケースと、時間が経って発症するケースがあります。
症状としては、皮膚のかゆみや喘息、めまいなどが挙げられます。
ちなみに、金属を口に入れることによりガルバニー電流のリスクも高まります。
こちらは、口内に異なる金属が多く存在するときに発生する電流です。
発生すると自律神経に乱れが生じ、頭痛や耳鳴り、肩こりなどが起こることもあります。
二次虫歯が起こりやすい
金銀パラジウム合金は、銀歯の下で二次虫歯が起こりやすいです。
銀歯は金属であるため、噛む力によって徐々に変形します。
そのため、経年によって銀歯と歯の間に隙間が生じます。
こちらに食べカスやプラークが溜まると、いつの間にか銀歯の下で虫歯を発症します。
もちろん目に見えないため、気づいた時にはかなり進行していることもあります。
メタルタトゥーのリスクがある
メタルタトゥーとは、金属が錆びて溶け出し、歯茎に沈着してしまうことをいいます。
金銀パラジウム合金は錆びやすいため、メタルタトゥーが起こりやすいです。
具体的には歯茎が黒ずんでしまい、見た目がとても悪くなります。
一度こうなった歯茎は、表面の歯茎をピーリングという方法で剥がすしかありません。
まとめ
ここまで、金銀パラジウム合金のメリット・デメリットについて解説してきました。
銀歯はコストや強度といった点でのメリットが大きい素材です。
一方で、審美性や安全性に関しては自由診療の素材より劣る部分が多々あります。
特に金属アレルギーの方は、他の素材を選ばざるを得ません。
実際度の素材を選ぶかについては、医師のアドバイスを参考にしながら決定しましょう。