子どもの歯の問題は、親御さんが対策を取る必要があります。
本人がどれだけ注意していても、完全に予防するのは難しいからです。
また歯の問題と言えば虫歯や歯周病が挙げられますが、他にも酸蝕歯があります。
今回は子どもの酸蝕歯における概要や主な原因などについて解説したいと思います。
酸蝕歯の概要
酸蝕歯(さんしょくし)は、酸性の強いものが触れることで歯の表面が溶ける症状です。
虫歯の場合、虫歯菌が出す酸によって歯が溶かされます。
一方酸蝕歯は飲食物などに含まれる酸が歯に作用し、エナメル質を溶かします。
つまり酸蝕歯に虫歯菌はほとんど関与していないということです。
また虫歯の場合、患部が部分的に変色します。
対する酸蝕歯は、進行によって全体的に歯が透けて見えるのが特徴です。
その他の症状としては、歯の先端や角が丸みを帯びることも挙げられます。
冷たいものや温かいものがしみる知覚過敏の症状も出ます。
ちなみに酸蝕歯は子ども特有の症状ではありません。
大人でも発症することがあります。
子どもの酸蝕歯における主な原因
子どもの酸蝕歯は主に以下のような原因で発症します。
・乳酸飲料の摂取
・フルーツジュースの摂取
・スポーツドリンクの摂取
・胃食道逆流症
・薬の服用
・その他
乳酸飲料の摂取
乳酸飲料の摂取は子どもの酸蝕歯を引き起こしやすいです。
乳酸飲料は乳酸菌を手軽に摂れる食品で、発酵乳とともによく摂取されています。
子どものエネルギーをつくり、お腹の調子を整えるための必需品です。
また子どもの中には、乳酸飲料の味が好きな子も多いです。
しかし酸蝕歯防止の観点から、あまり摂取しすぎないことをおすすめします。
飲み物にはpH(ペーハー)値というものがあります。
pH値は酸性、アルカリ性の度合いを表したものです。
数字が小さくなるほど酸性度は高くなります。
普段の口内は6.5~7.0で弱酸性~中性ですが、乳酸飲料のpH値は3.3~3.6です。
つまり頻繁に飲むと口内が酸性に傾き、酸蝕歯のリスクを高めるということです。
特に就寝前などに摂取すると、酸蝕歯を発症する可能性は高くなります。
フルーツジュースの摂取
フルーツジュースの摂取も、子どもの酸蝕歯につがなりやすいです。
子どもはフルーツジュースを摂取する機会も多いです。
自宅はもちろん、外食チェーンなどでも子ども用の商品はよく見られます。
また砂糖不使用のフルーツジュースは健康にも良いですが、飲みすぎは良くありません。
フルーツジュースのpH値は、オレンジジュースの場合で3.8です。
こちらは乳酸飲料と同じく、かなり酸性度が高いことを表しています。
特に柑橘類については酸性度が高いため、親御さんは注意してください。
スポーツドリンクの摂取
スポーツドリンクの摂取も、子どもの酸蝕歯におけるリスクを高めます。
スポーツドリンクは、スポーツの際の水分補給として飲まれることが多いです。
水分だけでなく、糖分や塩分も効率的に摂取することができます。
ただし、スポーツドリンクのほとんどはpH値4.0以下です。
スポーツ中は口内を洗浄するのも難しいため、どんどん酸蝕歯のリスクは高まります。
ちなみにスポーツドリンクには、砂糖も大量に含まれています。
よって飲みすぎは虫歯のリスクを高めることにもつながります。
胃食道逆流症
子どもの酸蝕歯における原因としては、胃食道逆流症も挙げられます。
胃食道逆流症は逆流性食道炎とも呼ばれるものです。
食べ物と胃酸が胃から食道に、ときには口の中にまで戻ってくる症状です。
胃酸は強い酸性のため、胃液や消化液が食道に逆流すると胸焼けが起こります。
喉まで達すると喉の違和感や慢性の咳、声枯れなどの症状も出ます。
また子どもの場合、胃食道逆流症になったことで嘔吐を繰り返すことがあります。
何度も酸性の強い胃酸が口内に入り込むことから、酸蝕歯の危険性も高くなります。
ちなみに、特に逆流が見られやすいのは生後6~7ヶ月頃です。
薬の服用
薬を服用することでも、子どもは酸蝕歯の症状が出る可能性があります。
具体的には、ビタミン剤や鉄剤などの酸性の薬剤に注意しなければいけません。
これらの服用後には水でよくうがいをする必要があります。
またアスピリンという薬の服用にも注意が必要です。
アスピリンは解熱鎮痛剤の一種です。
熱を下げたり、痛みを抑えたりする働きがあります。
アスピリンについては、15歳未満の子どもが摂取することは原則できません。
それでも15歳以上の子どもの場合、摂取すると酸蝕歯を引き起こすことがあります。
その他
例えば脳性麻痺の子どもなどは、胃食道逆流症になりやすいです。
つまり酸蝕歯も発症しやすいということです。
また飲み物で糖分を摂取するため、スポーツドリンクを常飲していることもあります。
こちらも脳性麻痺の子どもが酸蝕歯を引き起こしやすい理由です。
まとめ
ここまで、子どもの酸蝕歯における主な原因について解説してきました。
酸蝕歯を放置することで起こる問題は見た目の悪さだけではありません。
歯の表面を守るエナメル質が溶けることで、悪化すれば歯を失うこともあります。
もちろん歯を失うことで噛み合わせが悪くなると、他の歯にも影響が出ます。
親御さんは主な原因を把握し、なるべくそこから子どもを遠ざけるようにしましょう。