子育て中の方は子どもの歯並びや食べ方、爪噛みなど、口周りに関する悩みが尽きないことと思います。
その中でも、近年増加しているのが“お口ポカン”であり、悩んでいる親御さんも多くいます。
今回は、子どものお口ポカンにおける概要や原因、デメリットなどについて解説します。
お口ポカンの概要
子どものお口ポカンは、日常的に口がポカンと開いている状態です。
ポカン口、口唇閉鎖不全症とも呼ばれます。
お口ポカンは、食べる・話すなどの口腔機能が十分に発達していない病気である、口腔機能発達不全症の一つです。
また、全国の3~12歳の子ども約3,500人を対象に行った大規模調査では、31%の子どもにお口ポカンの症状が見られました。
つまり、子どものおよそ3人に1人は、お口ポカンを発症しているということです。
子どものお口ポカンにおける主な原因
子どものお口ポカンは、主に以下のような原因で発症します。
・口周りの筋力低下
・出っ歯
・舌小帯短縮症
・慢性的な鼻炎
各項目について詳しく説明します。
口周りの筋力低下
子どもは口周りの筋力が低下していると、お口ポカンを引き起こしやすくなります。
なぜなら、唇を閉じる力が弱くなるからです。
また、舌の筋力低下でも、お口ポカンを発症することがあります。
舌が口の中で脱力すると、舌の姿勢が悪くなります。
こちらを舌癖といいますが、舌癖はお口ポカンや歯並び悪化の原因です。
本来、舌は上顎とピッタリくっつき、舌先が少し前に触れるのが正しい位置とされています。
出っ歯
出っ歯の子どもは口が閉じにくく、口呼吸になりがちです。
このような口呼吸は日常化し、そのうちお口ポカンにつながります。
また、前歯の上下に隙間ができる開咬が見られる子どもも、上下の歯がうまく噛み合わず口が少し開いたままの状態になります。
舌小帯短縮症
舌小帯短縮症も、子どものお口ポカンの原因です。
舌小帯とは、舌の裏側の真ん中にあり、口の底とつながっている筋のことをいいます。
また、舌小帯が生まれつき短い状態を舌小帯短縮症といい、重度の場合は筋肉のバランスが崩れて口呼吸になります。
舌を上に上げたとき、舌がハート形になる場合は、舌小帯短縮症である可能性が高いです。
慢性的な鼻炎
アレルギー性鼻炎や蓄膿症などにより、慢性的に鼻が詰まっている子どもは、口呼吸のリスクが高まります。
もちろんこのような状態を放置していると、鼻で一切呼吸をしなくなり、お口ポカンにつながります。
子どものお口ポカンにおけるデメリット
子どものお口ポカンを放置すると、以下のようなデメリットが生じます。
・虫歯や歯周病のリスクが高くなる
・口臭がする
・歯並びが悪化する
・病気にかかりやすくなる
各項目について詳しく説明します。
虫歯や歯周病のリスクが高くなる
子どものお口ポカンは、虫歯や歯周病のリスクを高めます。
なぜなら、口が開いたままになり、唾液の分泌量が減少するからです。
唾液には、口内の細菌や食べカスを洗い流す自浄作用、細菌の活動を抑制する抗菌作用があります。
そのため、唾液が減ると、虫歯菌や歯周病菌が口内で繁殖しやすくなります。
口臭がする
前述の通り、子どものお口ポカンは唾液の分泌量減少につながります。
また、唾液が減ると口内が洗い流されないため、口臭も強くなります。
このとき発生する口臭は、卵が腐ったようなニオイ、生ごみのようなニオイなどに例えられることがあります。
歯並びが悪化する
子どものお口ポカンは、歯並びが悪くなることにもつながります。
お口ポカンの場合、舌が正しい位置に維持できないため、低位舌になることがあります。
低位舌とは、その名の通り舌が下顎の方にダランと低く下がっている状態をいいます。
また、低位舌の場合、舌が下の前歯の裏に押し付けられます。
このような余計な力により、受け口やすきっ歯を引き起こす可能性があります。
病気にかかりやすくなる
お口ポカンは、風邪やインフルエンザなどの病気にかかるリスクも高めます。
なぜなら、鼻呼吸をしなければ、菌やウイルスをダイレクトに取り込んでしまうからです。
鼻の粘膜は、体外の空気を肺呼吸に都合が良いように調節します。
一方、口呼吸にはこのような機能はありません。
子どものお口ポカンにおける治療法
子どものお口ポカンは、歯科クリニックの指導のもと、口の筋肉のトレーニングを行うことである程度改善されます。
また、同じく口の筋肉を鍛えるために、食事の内容を見直すのもポイントです。
ちなみに、鼻の病気が原因である場合は、まず耳鼻科でこちらの治療を行います。
舌小帯短縮症の場合は、舌小帯切除術という舌の裏の筋を切る治療で対処します。
まとめ
子どものお口ポカンは、決して珍しいものではありません。
多くの親御さんが悩み、そしてお口ポカンになっている子ども本人が悩んでいます。
ただし、お口ポカンは決して治らないものではありません。
口周りの筋肉を鍛えたり、原因となっている症状の治療を行ったりすることで、十分に改善する可能性はあります。
そのため、まずは歯科クリニックの医師に相談してみましょう。